| ロイエド子SS 余裕の無い恋 act.2 |
中央からわざわざ無駄にご足労くださった将軍閣下との嫌味にまみれた会議が終わり、慣れているとは言ってもやはり重い心のまま部屋を退室した。 軍服の襟を寛げ、シャツのボタンを二つ程開けると小さな開放感で胸に溜まった重たい溜息が長く漏れる。 こんな時想うのは愛する少女。 あのくるくる変わる表情で、聡く論じ合える会話で、美しい金色の髪と瞳で、むしろその存在で私を癒して欲しいと切望してしまう。 彼女は今どこにいるのだろうか。 3ヶ月前にお互いの気持ちを確かめ合い、1ヵ月前に初めて肌を合わせた。 まだ13歳だが、それよりも更に幼く見える小柄さ故に大分無理もさせただろう。 無論犯罪になってしまうのも解っている、そのリスクごと彼女の全てが欲しかった。 負担ばかりの情事の後でも彼女…エドワードは破瓜の血と痛みと情欲の涙に濡れたまま微笑んでくれた。 「とても嬉しい」と…。 あれからまた1ヵ月が過ぎようとしている。 旅に出る彼女を見送った直後から、既に寂しくて我慢ができなかった。 温もりを知ってしまったから尚更。 毎日君だけを抱きしめていられたらどんなに幸せだろうかと。 罪にまみれた手足の機械鎧ごと全てが美しく愛しおく、一秒たりとも離れたくはない、そう心が叫んだ。 彼女には弟が、私にも目指すものがあり、お互いの愛を確かめられる時間はこれから先も本当に少ないものなのだろう。 会いたい、そう切望する。 司令部に戻るとアルフォンスがいた。彼女の弟は鎧姿故にとても目立つ。 アルフォンスがいるという事は当然彼女もいるということで、先ほどまでキリキリと締め上げられていた胸の痛みは儚く霧散した。 会えるんだ、君はどこだ?執務室か、図書館か?資料室の鍵は私が管理しているから違うだろう。 まるで10代の少年のように私の胸は熱く高鳴った。 「戻ってきたのだね、無事で何よりだアルフォンス。」 震えそうになる声を、紅潮しそうになる顔をなんとか隠し普通然と話しかける。 「ぁ、おかえりなさい大佐!会議お疲れ様です。」 柔和な声と表情のある話し方でこくりと顔を傾けるから、反応の正反対のエドワードを思い出して微笑んだ。 「今大佐の仮眠室をお借りして、姉が休ませて頂いてるんです。なんだかいつもすいません。」 恐縮したように身体を丸めるアルフォンスの肩を「問題ないよ」と叩いてやって、焦って居ても立ってもいられないのを悟られないようにわざと緩慢な動きで執務室に歩みを進めた。 抱きしめる時間が欲しい、素肌の胸を合わせなくてもいい。 せめてキスだけでも。 「中尉、少し重要な話があるので執務室には誰も近づけないでくれ。」 「はい。」 「アルフォンス、起きてきたら少しお姉さんを借りるぞ?」 「あ、はい。どうぞ僕にはお構いなく。」 満足な返答を得て、扉に手をかけた。 私専用の仮眠室は執務室の奥にある。 一人は余裕で眠れるベッドと着替えが掛けられるクローゼットがある程度の簡素な部屋だ。 あの扉を開ければ夢にまで見た少女がいると思っただけで、胸だけでなく下腹部まで熱くなってしまうのに気がついて居た堪れないような苦笑を浮かべた。 極力音を抑えるように慎重に扉を開けると、ベッドには小さな山ができている。 ただでさえ小さい身体を丸めて眠るのが癖なのだという確信ができた。 (君を知る事は楽しいな…) くすりと笑いながらベッドに歩み寄る。 「エドワード?」 起きていたらいいな程度に小さく呼びかけてみた。 返事はない。熟睡しているのだろう。 ベッドに腰をかけ顔を覗き込むと、目の下にうっすらと隈のある小さな顔があった。 寝不足なのだろうが、布団の温もりのお陰か頬がうっすら薔薇色に染まっていて顔色の良さが安心させてくれた。 触れるか触れないかで指を隈に添わせる。 無反応なのを良いことに、少し大胆になった私は身体に手を滑らせて新しい怪我などないかと探ってみた。 「ない…ね、良かった。」 私の今の顔を見たら一体どんな反応をするんだろうね? 「…ん」 身じろぎし、少しだけ開いた程よくぽってりとした唇に視線が吸い寄せられた。 「恋人同士なんだからキスくらい許してくれたまえよ?」 自己満足に頷いて、エドワードを抱き込み唇をそっと寄せた。 ← / → |