ロイ×エド子吸血鬼パラレル2
永劫の約束










※ このお話はパラレルです、苦手な方はくれぐれも気をつけてください。








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さらりとした上質のシーツの感触、それはまるで真綿に包まれているような優しい温かさだった。
目が覚めればきっとまた硬い木の上、その日暮らしの俺達に温かい寝床なんてありえないのだから…。




「……ん、………ぃさん!起きてよ兄さん!!」

「あと5分…。」

「いい加減にしろったら兄さんっ!!」


がばりと柔らかい上掛けを奪い取られて、渋々目を開けるとかなりご立腹の様子の最愛の弟の姿。
あれ、上掛け?

ぱちりと目を瞬かせ状況確認しようと視線を巡らせれば、初めて見る部屋、初めて見る光景。
豪華な装飾が施されたその場所はあまりにも自分には場違いで戸惑ってしまう。


「あー、ある。ここどこ?」


露骨に呆れた表情をされ、この場所にいる理由がもしや自分にあるのかな?と暢気に昨夜の事を思い起こせば、蘇る記憶の中に漆黒の青年がいた。

「兄さん寝惚けないでね♪」

口元は笑ってるけど目も声も怒っている弟に少しだけ身を引く。

「わりわり、ちゃんと思い出したから、な?怒るなって!」

「もう、ちゃんと説明してよね!」

「はいはい。」



のそりと緩慢な動きで起き上がりベッドの縁へ腰掛けると、アルフォンスも椅子を側に寄せて座った。
姉弟をここまで運んだ人物が人間ではないのを最初から見抜いていたアルが怒っていない訳が無いのだ。



「姉さん、あの人は…吸血鬼なんだね?」



唐突に先手を打たれ驚きよりも「やっぱり俺の弟は賢いなぁ〜」とか暢気に考えていたのが判ったのか、怒りにぶるぶると振るえながら自分の首筋を指差す弟の顔は少しだけ青褪めている。


「ん?」

「首筋!穴開いてるんだよ!!ふたっつ。」

「おー、そうか気付かなかった。」

全くいつもと変わらない雰囲気の姉に痺れを切らす。

「姉さん、吸血鬼になっちゃったの?!」

「は?……あー血は飲ませてやったけどなってねぇよ?」


あっけらかんと言われアルフォンスは上体を屈めて溜息をついた。


「良かった…。」

「でもいつかはなるかもな。」

「姉さん!!!」


エドワードは弟に隠し事をする事を好まない。
自分がもしアルフォンスの立場だったら怒り狂うだろうと考え、弟の気持ちも考慮に入れつつ、ロイという吸血鬼と出会った経緯を丁寧に話して聞かせた。

無論、ファーストネームを除いて。






「で、僕達はここに住むんだね?姉さんが吸血鬼になる日を待ちながら!!」

「そうだなぁ。お前だってそろそろ定住したほうが良いって言ってたじゃないか。丁度いいだろ?」

「そうだけどっ!!」



アルフォンスが一際声を荒げた瞬間、扉を叩く音。
ゆっくりと開けられたそれに目を遣れば、出会ったばかりで永遠を約束した男、ロイ・マスタングが立っていた。


「お目覚めかい?私の可愛い人。」

「おう。おはようマスタングさん。」


黙り込むアルフォンスに気を使っているのか、中へ入って来ようとはしない男にエドワードは笑顔で答える。


「他人行儀だね、まぁ仕方ないか。」

「あんた、まだ顔色悪いな。」

「長いこと絶食していたものでね、まだ本調子にはなれないんだよ。気にしないでいい。」



黙って俯いていたアルフォンスが顔を上げた気配を感じて目をやると、ゆっくりと立ち上がりロイに向かい合った。


「マスタング…さん。姉さんをどうなさるつもりなんですか?」

「アル、それはもう話しただろう?」

「姉さんは黙ってて!マスタングさんに聞いてるんだ!!」



しゅんと肩を窄めるエドワード。可愛らしくへこんでしまった彼女の元へ慌てて近付こうとしていた男に両手を広げて立ち塞がる。


「お答えを…マスタングさん。」


心配そうに姉を見る人外の男は、とても人間臭い表情で少しだけ緊張が解けるのが判った。

答えるまではエドワードに近付けないと察し、ロイは口を開く。


「君のお姉さんを、私の永劫の伴侶に…。」

「永劫?それは吸血鬼として、という事ですか?」

「そうだ。」


アルフォンスだって吸血鬼の口にする『永劫』の意味くらい理解はできる。
果たしてそれが幸せなのか。

無論不老不死などという馬鹿げた夢物語を追うような人間は今も昔もいるだろう。
聡い姉の事、そんなくだらないものを自ら望む筈も無い。

しかしそれをエドワード自身が承諾したのだという事実が、アルフォンスの心に引っかかっているのだ。

エドワードは両親を失ったあの日から、とても『死』というものに弱くなってしまったのを知っている。




「…姉さんの弱さを利用してはいませんか?」




殊更静かに問う真っ直ぐな視線を受け、ロイはふいと逃げるように視線をエドワードに向けた。


「アル、その答えは今でないと駄目か?」

「姉さん…。」

「俺が自分で選んだ、あの人に血を飲ませて名前を聞いた。それだけじゃ駄目か?」




暫しの沈黙。


踵を返し部屋を出てゆくアルフォンスを止める事はできなかった。
ゆっくりでも必ず、理解して貰えると確信していたから。


寂しそうな、困ったような瞳で見つめる瞳にエドワードは微笑む。


「ロイ、大丈夫。アルは賢くて優しくて自慢の弟だよ。」

「あぁ、とても…賢い姉想いの良い子だ。」


ファーストネームを呼ばれ、どくりと冷たい心臓が鳴った。
金色の髪も、瞳も、優しい笑顔も…生まれた時から自分にだけは無縁であり、だからこそ見る事は適わぬそれに憧れていた…太陽とはこんな色なのだろうと漠然と想う。

ほんの数時間前にエドワードと出会い、もう手放す事はできない。
初めて味わうこの感覚に戸惑いながらも、胸に浮かぶのは一つの言葉。


「ロイ?どうした、具合悪い?」

「いや、……まぁ悪くない訳ではないけど…。」

「こっち来て。」


可愛らしくおいでおいでする少女に笑みを漏らす。
昨夜ロイがしたように、自分の座る脇をぽんぽんと叩いて見せるエドワードは本当にまだ幼くて、弟が心配するのも当然なのだと納得できた。

近寄れば差し出される首筋。

白く滑らかなそれはとても甘い誘惑で、欲望を抑えるのに結構な理性を要した。


「結構寝たから大丈夫だよ?」

「だめだ。栄養のある食事を用意させるから、少し安静にしていなさい。」


姉弟を運ぶ為の余力を残す為に消してやれなかった昨夜の吸血痕。
赤く盛り上がる痕は、小さな彼女にはとても痛々しく見える。

そっと曝け出された傷口に舌を這わせれば、くすぐったいのかぴくりと反応をする身体。
丹念に舐めてゆくと、それは綺麗に消えていった。


「くすぐったいよ、ロイ。」

「あぁ、痕を消したんだよ。すまなかったね、これを見たらアルフォンス君も心配しただろう?」

「あー…したな。でもこれからは慣れて貰わなきゃいけないし。」


さも当たり前だと言い切るエドワードに愛しさが込み上げる。
それはこれからの彼女と弟を思うと結構な痛みを伴った。


「いいのかい?」

「何が?」

「あんなに軽はずみに私を選んだ事…。」


首筋に顔を埋めたままだから表情は判らない。
でも多分、不安に揺れているのだろう。



この吸血鬼はとても人間くさい所があるから。



エドワードは優しくロイの頭を抱き込み、昔、もっと小さかった頃弟にしてやったように頭を撫でてやった。


「アンタこそ俺で良かった?」

「君じゃなきゃ、駄目だった。」

「じゃあそれでいいじゃん。」


俺じゃなきゃ駄目なら、仕方ないだろ?
エドワードの明るい声が一際熱く胸に落ちて来た。


「そうだな。少しだけ弱気になってしまったようだ。」


顔を上げ、くすくすと笑いあう。


「さあ、教えてくれロイ。この家の事、アンタの事……これからの事。」

「そうだね、じゃあ食事の手配が終わったらゆっくりと…私の可愛い人。」

「ばか!それ止めろ恥ずかしい!!」


ロイは両手を挙げて今にも暴れだしそうなエドワードの唇に掠めるようにキスをすると、小さく耳元で囁いて上機嫌のまま部屋を出て行った。







『愛してる。』







顔を真っ赤にして頬を膨らましていると、開け放たれたままの扉からアルフォンスがひょっこりと顔を出す。


「姉さん…。」

「アル、ごめん俺…。」

「違う、いいんだ…。僕こそごめん。」






全てを理解するのにはまだ時間が必要だろう。アルフォンスにも、エドワードにでさえも…。






不安だって沢山あるけれど、何故かエドワードはどきどきと胸を高鳴らせていた。

まだこの部屋の外を見ていない。


他にも居ると言っていたこの屋敷の住人、新しく始まる生活。





そしてロイ・マスタングという優しい吸血鬼との永劫の未来――――――。






END





沢山のリクエストありがとうございました。
『はじまりの夜』の続編です。
まさに前作のすぐ後のお話なんですが、いかがでしたでしょうか?
まだ出てませんね?軍部の皆さんが!
やべー本当は出したかったんだ。

まさか……まさか……続くんでしょうか?(´Д`;)

ご意見ご感想お待ちしております。続き読みたい〜でもOKですお。

pana 2005/11/9








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