| Triangle続編【ステップアップ10title/challenge10title】 Step Up 0.2 電話 |
「突然だがハボック、明日の午後は休暇を取りたまえ。」 突然振って沸いたような上司の言葉に、俺は口をあんぐりと開けた。 確かにここ最近イーストシティは大きな事件もなく、俺達東方司令部の面々は主に書類だけを敵として働いている状態だけど、まさか自分に甘く部下には鬼厳しいと有名なロイ・マスタング大佐がそんな言葉を言うなんて思っても見なかったのだ。 「有給消化は結構ちゃんとやってるつもりなんッスけどね。」 時折、あまりにも有能で仕事を大事にする余り休暇をとる事すら忘れてしまうような人間が、労働基準法というのを理由にして無理矢理休まされる事があるが、どの角度から見ても俺はその類の人間に配されない。 大佐ともあろう人がわざわざ煙草を吸いに喫煙所まで来ている俺を追ってまで伝える事だとしたらそれは何かあるに違いない。 訝しがる俺に、周囲に少し視線を巡らせ人がいないのを確認してから少し小声で話し始めた。 「先程鋼のから電話があった…。」 「エド帰ってくるんすか!」 喜びを隠すこともできずに声を発する俺に、大佐は眉間に皺を寄せて窘める。 3ヶ月前、俺達はひょんな事から同じ女性…と言ってもまだ14歳になったばかりの少女なのだが…に想いを寄せている事を知った。 大佐から見ると被後見人であり部下、俺から見ると階級的には上司に当たってしまうその少女は、過酷な運命の元、右手と左足に機械鎧を纏い、弟を守るため、その手足と弟の肉体を取り戻す為にと性別すら捨て、国家錬金術師という肩書きを持って先の見えない旅をしている。 時折誰も見ていないような瞬間を狙って無意識に顔に浮かべる焦燥感や不安や儚さに気付いてしまった時、俺は恋に落ちた。 ずっと少年だと思い込んでいたのが本当は女であったと知ったのは、この先俺達のフォローが必要になってくるだろうという配慮の元で大佐から司令部のごく一部にだけされた機密事項だった。 小さな身体で、毎回どこかしらに傷を増やしながらも笑顔を絶やさない。人を傷つける事を嫌い、そうする位ならば己が傷つく事を望む彼女はあまりにも刹那的で、戻って来る度に想いは募っていった。 俺の恋敵に当たる、ロイ・マスタング大佐も同じ気持ちだったに違いない。 たかが部下に、尊敬し一生ついてゆくと誓った上司に、俺達は譲れないという気持ちをぶつけ合った。 そんな状態であってもお互いの信頼は損ねられる事もなく、仕事はいつも通りする事ができたが、それとこれは別。と大人げも無く何度も衝突を繰り返し。同僚達には呆れられたものだ。 そんな日々が二ヶ月程続いたある日、少女―――エドワード・エルリックは旅から帰還。 2ヶ月間で溜まり溜まったお互いの気持ちを告白もせずにぶつけてしまい、彼女を酷く傷つけた。 俺達は話し合いの末、決して奪い合う事はしないと誓いを立て『彼女を護り、見守り、愛する』新しい関係を築く事が出来たのだった。 どちらかを選べと詰め寄る事はこれから先も無いだろう。エドワード自身が選べばまた話は別なんだけどな。 旅の生活の中で煤けてゆく彼女の心を包み込みたいと願う俺達の想いは彼女にも受け入れられ、不思議な三角関係が出来上がった。 その日の午後、報告書の提出だけが立ち寄った理由だったエドワードは俺達の見送りを受けまた弟と旅に出た。 せっかく想いを伝えたのだからもう少しだけでも滞在してデートを、という俺達の思惑は一蹴され、けれども旅立ちの時に見せてくれた幸せそうな笑顔は、確実に彼女に暖かな何かを灯したのだと確信できた。 だからこそ、決して無理だけはしないようにと約束をして穏やかに送りだしたのだ。 あれから1ヵ月。 電話があったと告げた上司の表情は思わしくない。 「何かあったんすか?」 「わからん。」 即答かよ…。 「ただ…いつもと少し違うんだ、声が。何かあったかもしれん。」 「また寝不足とか、食事してないとかじゃなくてッスか?」 「それならまだいいのだが…。」 「……。」 人の機微に聡いこの上司は、言葉尻や発する声でそれを読み取る事を得意としている。 この人が言うくらいなのだから、きっと何かあったんだろうな…なんて妙に納得してしまった。 「明日は午後にどうしても抜けられない軍議が入っているのは知っているだろう?」 「あー、わざわざ中央からご足労くださる将軍殿が参加するヤツですね。」 「そう、だからお前は午後から有給でも取って姉弟の相手をしてやってくれ。原因を聞きだす事も忘れずにな?」 弱みを人に晒す事がほとんど皆無なエドワードからは無理だろうが、その原因を知りえる唯一の旅の同行者ならばきっと聞きだすことも可能だろう。俺はそう思い黙って頷いた。 「今日中に3日分は書類整理しておくつもりだが、明日は軍議の内容如何では泊まりになる可能性もある。」 「そっすね。お疲れ様です。」 「晩飯には合流するつもりだが無理かもしれん。」 だから聞き出して私に連絡を入れろ、ってか、簡単に言ってくれるよな。 ま、俺も気になるし別にいっか。 「どうせならエドと二人きりでデートしてみたいんスけどねぇ。」 悪びれもせず言うと、上司はニヤと笑って腰に手を当てた。 「そんなことさせるとでも?…気持ちは判らんでもないがな。お前にはできんよ?」 「ちっ、流石良く判ってらっしゃる上司殿。」 「彼女が望まん事をするお前じゃない。私じゃあるまいし…な。」 「こーら!アンタっ…いや今のナシです。どうせアンタもできゃしねぇ。」 惚れた弱みってやつだ。 ふと腕時計を見ると既に15時をまわっていて、俺は明日の午後の有給のために片付けないといけないデスクの上の書類を思って頭が痛くなる。 「じゃ、あいつらの為にも職務に励んできますっ!」 「うむ。頼んだよ、ハボック少尉。君には期待しているのだからね。」 大佐は俺のわざとらしい敬礼に噴出しながら、威厳たっぷりに激励しその場を後にした。 エド、何があったんだ? 司令室に向かいながら今どの辺りに居るのかも解らない少女を想う。 本当は笑顔で帰ってきて欲しいんだけどな。 とりあえずは、明日顔を見てからだ。 END |
| 一個前のあとがきでエロなしとか言ってましたがペッティングくらいいいんじゃないかな〜とか思ってみたり(馬鹿。 とりあえずロイとハボは思い切りエドを甘やかしてください。 pana 2005/10/19 |
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