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『アルフォンス・エルリックの攻防』





「ね…姉さん、なんかおかしくない?」
「んぁ?べーつになんもおかしかねぇだろ。」

僕ら姉弟はイーストシティの駅に降り立ったその場で顔見知りの軍人に捕まった。
口では「偶然だなぁ!」とか言ってたけど、明らかに嘘だ、何かある。

「ハボック少尉…。僕らは先に宿を取りに行きたいと言ったはずなんですけど…。」
「あ…あぁ、スマン。久しぶりだったから興奮して拉致っちまったぜぇ。司令部すぐだしいいじゃねぇか、、気にすんな!」

目がね、物凄い勢いで泳いでますから。アメストリス眼球水泳大会とか出たら優勝できるんじゃないかと思うほどに。
嘘つけない人ですもんね、少尉。
僕はわざと聞こえるように音に乗せて、はぁと溜息をついた。

姉は姉で少尉を信じきって、さっきから「ラッキーだったよな♪」とか言っちゃってるし。
なんかこの旅を始めてからどんどん人の裏を伺うようになってしまった自分が悲しい。
無論、それは姉に薄汚い欲望をそのまま視線にして送ってくるような男達から守る為であったし、美少女だという自覚もなく可愛らしい愛嬌を天然に振りまいてしまう超鈍感な姉をフォローするためでもあった。

まぁようするに、姉さんは誰にも渡さない、触らせない、汚させない。
寝る事も食べる事も性的欲求もない、僕の三大欲望。





車から降りた後、ハボック少尉が先に立って歩き、僕らは東方司令部の入り口に到着した。
鎧がびりりと震えるほどの緊張感。

建物内部に入ったらそれは確信に変わった。
(姉さんは気付きもしない…馬鹿な娘程可愛いって昔の人はよく言ったよね。)

真っ直ぐ執務室へ行けと言わんばかりに要所要所に人が配置されている。

入って3つめの角にブレダ少尉。
そこを曲がると階段があり昇ったところに図書室があるからだろう。

正面の階段を昇りきり左側にフュリー曹長がにこやかに(でもかなり顔色が悪い)立っている。
左側に進むと資料室があったよね。

右に曲がるしかなくて進んでいくと司令室の前にファルマン准尉が口の端を微妙に引き攣らせながら笑顔で中へ押し込んでくれた。



間違いなく姉さんが寄り道しないようにと配置されている!



「あら、おかえりなさいエドワード君、アルフォンス君。」
「ホークアイ中尉…こ、こんにちは。」
「ちゅういーただいま♪」


いつもと変わらない笑顔、態度…一番判り辛い人だ。
僕は警戒を強める。敵か味方かを見極める為に。

すると何か察してくれたのか、中尉は僕にだけ目で合図を送ってきた。
真摯な瞳は「私は味方よ」と言ってくれているようで、少しだけ安堵したけれどここで気は抜けない。


姉さんはいつも通りの足取りで執務室の前まで歩いていく。
僕は姉さんのノックしようとした手を無言で止めた。


きょとりと僕を見上げてくるけど、敢えて無視して姉さんを僕の背後に押しやる。

一回だけ中尉に視線を送ると、彼女は僕に頷いて見せた。僕の行動は正しいのだと。
間違いない、中に何かある。


姉さんの真似をして拳で強く3回ノック。
バンと扉を蹴り開けた。








「大佐…お久しぶりです。」

僕はお腹に凄い勢いで抱きついているロイ・マスタング大佐に冷たい視線を送り、引き剥がしもせず挨拶してやった。

やっぱり、あそこで姉さんが開けてたらこのエロボケ大佐は姉さんに抱きつくつもりだったんだ!
あれか?ターゲットロックオンなのか?ロリコンに趣旨変えか??!!


大佐はコホンと咳払いで誤魔化すように僕から離れる。

「ひ、久しぶりだね?アルフォンス君。」
「………僕に会えた感動で抱きつくなんて、僕も隅に置けませんね…クス。」

受けてみろ!この旅で培った威嚇のオーラを!!!


「――――っ!!」


間違いなく今僕らの間には火花が散っているはずだ。
本当に本当に本当に鈍感な姉さんは、すっとぼけた声を出しながらひょこりと僕の背後から顔だけ出す。
あーもう!そのポーズも駄目なのに。


「はっ…はガねのっ!!!」


今裏返った。裏返ったよ?大佐の声っ!
何何何?
声が裏返った大佐って何?
ちょっと!その周囲に舞ってる星はアームストロング少佐のやつじゃないの???えー…。


声が裏返ったからなのか、姉さんに会えたからなのか…なんでそんな顔を赤らめて…。
まさかこのオヤジ…本気で姉さんに惚れてる?


うわ、壁に手をついて深呼吸してるよ!
胸に手を当ててドキドキを沈めてるんだよね?そのポーズ!

うはぁ…僕今まで生きてきた中で一番キモチワルイモノ見ちゃった気がするよ…。

姉さんは愛かわらず『?』いっぱい飛ばしてるし…。


「大佐?どうしたんだ…?具合悪いのか?」
「う…ぅ…はがねのぉ…か…か…か…」


大佐に駆け寄って手を差し伸べようとしている姉を抱き上げたら、その手を握ろうとしてた大佐の手が空でスカった。

ギャア!戦場?ここ戦場?凄い殺気なんですけど!!!大佐目が据わってるっ!
負けないよ!僕だって殺すよ!!!姉さんに触れたら殺すよっこの変態左!!!!


「そこまでです!!!!」


ビリビリとした空気を打ち壊したのは扉の所で立っているホークアイ中尉だった。
良く見たらその後ろでさっきまで見張りをさせられていたのだろうメンバーが手前の部屋で真っ青になって座り込んだままガタガタ震えてる。


「エドワード君、こっちへいらっしゃい?」


中尉は僕の胸の中にちんまりと納まっている姉さんに両手を差し伸べて少し怒ったような仕草で奪いとると流石は鍛えているだけあって軽々抱っこした。

「ね…姉さん…。」

小さくていつも勝気な姉さんなのに、僕等の殺意に満ちた無言の遣り取りに真っ青になって半泣き…。
心なしか中尉にしがみつく手がぷるぷると震えてた。


「姉さん、ごめんね?」
「うぅ…なんなのおまえらぁ…。喧嘩すんなよぉ…」


大佐も怯えさせてしまったのを反省しているのか挙動不審気味にオロオロと両手を動かしている。

「すっ…すまない鋼の…。」

全部この変態が悪いんだ。
あんな、小学生みたいに若草色の初恋オーラむんむんさせてるから!







あれ?






初恋オーラ?





そういえば、いつも女性をとっかえひっかえしている色ボケ大佐のくせに何か違和感があると思ったんだ。




へぇ…大佐の初恋ね…。




僕はニヤニヤしながら(表情では判らないだろうが)未だにオロオロしている大佐に近付くと、耳元で囁いてやった。














「大佐、まさか姉さんが初恋ですか?」






両肩がビクリと震えるのが見えた。
大丈夫、まだこの人には負けない!!!!!!!!!!!!




わざと聞こえよがしに「くすっ」と音を出して、僕は何事もなかったように姉さんに駆け寄ったのだった。
怒りと羞恥で真っ赤になった大佐に背中を向けて…。





END

ちょ…アルがアルじゃなくなってる!
真っ黒クロスケー!
ギャー!

はっ拍手ありがとうございましたっ!!
pana 2005/10/16




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