拍手御礼SS
『ロイ・マスタングの野望』





東方司令部から自宅へ帰る距離は歩いておよそ20分。
本来ならば出退勤は護衛を兼ねて車で送迎されるのだが、今日はどうしても夜の空気を吸いたくてかなり無理を言って断り歩いている。
若くして伸し上がった国軍大佐という地位は、命を狙われる事も多々あり、心配する部下達の気持ちも汲んで送迎を受け入れているだけで、彼らも私が一人でも滅多な事が無い限り一人で充分なのは承知しているのだ。


少しだけ遠回りして大通りを行く。
そこは夜のイルミネーションが鮮やかに眩しく、行き交う人も帰宅ラッシュを超えた時間のせいかカップルばかりが目につくようになっていた。
この通りの店はデートスポットでもある為、結構遅くまでやっている。
オープンカフェはライトを抑え、軽食とアルコールを出しているし、宝飾店や花屋、ブティックに至るまで未だ明かりを灯していた。


こういう光景はいつも目にしていたが、意識していなかった為中々面白いことに気付く。
まずはあのカップルだ。
白いテーブルと椅子に隣同士で座って、何やらどでかいグラスに果物の沢山盛り付けられたカラフルな(舌に色がつきそうだが)飲み物を二本ストローを刺して同時に飲んでいる。
ベッタベタなシュチュエーション過ぎて、私の過去の恋愛遍歴ではやったことがない。

そしてあっちのカップル。
歩道の植え込みの柵に彼氏らしき青年が座り、その膝の上に彼女が座っている。
楽しい会話でもしているのだろう、時々彼女が「キャハハ」と笑ったり彼氏が大きなジェスチャーで笑わせようと必死な様子だ。
スマートさが売りの私のエスコートの中には、有名人であるのもあり、あんな風な事もしたことがない。

後ろから聞こえてくる会話はどうだ?
「君って本当に世界で一番可愛いね…」
(いや世界で一番は鋼のだぞ?まぁいいが。)
「やだ、アナタも世界でい・ち・ば・ん…」
ちゅっちゅっ

振り向かなくても状況はよくわかった。




大半は10代後半から20代前半。
まぁそうだろう。ある程度年齢がいけばもう少ししっとりとした場所で優雅な一時を過ごすものだ。

童顔のくせに生き急ぎ過ぎた(特に色事は)感のある私には未体験ゾーンじゃないか。
正直あんな恋愛を今更その辺で声をかけた一夜だけの相手としてみたいなどと露ほども想わないけど。




でも………。




胸で腕を組んで右手で顎を擦る、まぁ私の考え事をする時の癖なのだが。
もう一度周囲のカップル達を見回して、私はそのポーズのまま当初の目的である『夜風に当たる』事へ一度も意識を戻すことなく家路についたのだった。











次の日、いつもの執務室。
私はやりたくもない書類を面倒臭そうに横目で見ながら、たまたま書類を持って入ってきたハボックに声をかけた。


「ハボック、私には野望ができたよ。」
「はぁ。大総統になるとかってんなら知ってますけど?」


判ってない、判ってないなぁこいつは。
大総統になるのは将来絶対決まって(脳内)いる事だし、手を抜くつもりもない。
今大事なのは目の前にある野望だ。


「お前、私が今一番大事に想っているのは何か忘れたのか?」
「あー。大将ッスか?……大将は大総統の地位より大事ってことですかね。」
「馬鹿者、両方大事だ、片方だけを手にして満足な人生が送れるはずもない。」
「ご、ご馳走様です。」


よしよし、納得したようだな。
新たな野望を思い描き、思わずにんまりしてしまう。


「うわー、大佐鼻の下10cmくらいになってますよ?なんかエロい事考えてたんじゃないでしょうね。
言っておきますけど、大将はまだ13歳ですからね!ふしだらな事だけは許しませんよ?」
「む、そんなに顔が変形していたか?ありえんな、この美貌が崩れるなどと…。」
「で、野望はいかがわしい事なんスか?返答次第じゃ中尉に報告しますけど。」


ったく、皆して二言目には中尉中尉と。


「いかがわしい事じゃない。私の想いが通じたらこんなお付き合いをしたいという願望みたいなものだ!」
「なんかあれですか?監禁して緊縛して日々陵辱の限りを尽くすとかそんなんですか?」
「貴様、死にたいようだな…。良く判ったそこを動くなよ?」


発火布を取り出して手につけ、有無を言わさず指先を弾いた。

「ギャアアアアアアアアアアッ」

計算通り私が放った焔はハボックの咥えていた煙草を灰にし、鼻のてっぺんと金髪の前髪を軽く焦がす。
なぁに、殺しても死なんお前には丁度いいだろうよ。

「あづー…本気で殺す気ですかアンタは!!!」
「アホか、本気だったらお前は今頃そこの床に灰だけになっているに決まっているだろう!
だいたい緊縛だの陵辱だのは貴様のいつも見ているエロ本の話じゃないのか?
確かに作者は好きそうだがこのシリーズではありえんのだよ!」
「シャレになんねぇ…(てか作者って誰だよ)。で、野望ってなんなんッスか?」

私は目を細め不敵に笑った。
いつも通りの尊大な態度で腕を組みながら。




「バカップルだ。」




お、おい!ハボック何故貴様動かない?
さっきので脳みそまで焼き切れたか?

軽く1分間の沈黙の後、真っ白に固まっていたハボックが恐る恐る口を開く。


「ば…?かっぷる…。」
「そうだ、鋼のはまだ若いし往来でイチャイチャとしてみたい!」
「えーと、大佐今まで沢山女性とデートしてたじゃないですか。何で今更…」
「往来であんな馬鹿な事できるか、恥ずかしい。私は大人なのだよ?」
「は………ぁ…。」


既に何か違う生き物みたいに見られてないか?私は!


「って言うとアレですか。バスケットにランチ詰めて公園に行って『ほらア〜ン』とか…?」
「貴様っ!」
「はっはいっ!!」
「素晴らしいな、それは…(うっとり)」
「…………何メモ取ってるんスか?」
「野望メモだ!…で、他にはどんなのがあるのかねっ!!!!」
「うわ〜……。それより告白まだじゃなかったっけ?」


ハボックは女にはモテないが本当に物知りで素晴らしい部下だな!(一言余計だが。)



私はその後ハボックを中尉の銃弾が襲ってくるまでの1時間程拘束して質問攻めにしてやった。
メモには10項目が増え、夢も膨らむばかりだ。

人目も憚らず鋼のとデート…、芝生で膝枕してもらったりそのままキスとか…くっいかん鼻の奥がツーンと痛んできた!











「大佐、何を妄想していたのかは予想がつきますが、書類についてしまうので鼻血を拭いてくださいませんか?」
「…………………。」






私は差し出されたティッシュをちぎって丸め鼻に突っ込んだ。








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「そう、大佐がそんな事を…。」
「そうなんッスよ…一体何を考えてるやら。」
「もしも何かの間違えでエドワード君と大佐が付き合うような事になったとして……。」
(間違えなんスか…)
「エドワード君の性格でそれをさせてくれるかとかまでは、大佐は考えてないようね…。」
「あー…絶対無理そうッスよね…。」





END

拍手ありがとうございます♪
『ロイ・マスタング シリーズ』まだ続いてます。
ワハー(>ワ<)←?

次はもっとシモネタに走れればいいな、とか。
一応エド女体化設定なのに一度も出てきてないから描写も糞もないのが実情なんですが、こんなんでも楽しんで頂けたら嬉しいと思います。
これからも宜しくお願いいたします。

pana





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