拍手御礼連載小説
『ロイ・マスタング流血事件』





サボリ過ぎるせいだとか、事件が多いからだとか、大佐という地位だからとか、色々あって司令部への泊り込みも多く、下着の替えが置いてある事をこんなに嬉しく思ったことはない。

必死で言い包めてエドワードに仮眠室から出て行って貰ったのはほんの数分前。
あの愛らしい舌が、小さくて白い歯が私の耳に触れ、唯でさえ暴走寸前だった股間が指一本触れることなく爆発してしまった!

恋ってやつはこんな危険を孕んでいるのか…。

手際良く軍服のズボンを寛げれば、湯気でも立ちそうな程ほかほかとした下着。
落ち込んでいる暇はないぞ、ロイ・マスタング!

青臭い独特の匂いに顔を顰めつつ、ベッドサイドに置いてあったティッシュに手を伸ばし自身にこびりついた白濁液の始末をする。

なんと虚しい作業なのか、これを鋼のがあの小さな口と舌でしてくれたら…などと馬鹿な妄想をしてしまったがばっかりに、また鎌首を擡げそうになって慌てて頭を振った。


汚れた下着は焔で跡形もなく消した。高潮する頬を両手で叩き、服装の乱れをチェックする。

なんとか体裁だけは整え、執務室へと続く扉をゆっくりと開けた。




「たいさぁ!!」

「うおっ!!!!」

「ギャー!姉さんやめてぇぇぇっ!!!僕は猫しか認めないからねっ!!」


突然小さな愛する少女に飛び付かれ、受け止めたは良いが心の準備ができていなかった。
格好悪い叫び声をあげてしまい、がっくりと項垂れながらも鋼のの背中にそっと手を回す。


「聞いてくれよたいさ!アルが、アルがあぁぁっ!!」

「変態左、姉さんから離れろー!」


離れろと言われてもがっちりと軍服を握り締められていて無理な話だ。
でれりと鼻の下を伸ばしながら、ふふんと鎧の弟を見やる。

「うわ、大佐きもっ!姉さん離しなってば、大佐がどんな顔してんのか判らないのーっ?」

「うるさいうるさいっ!アルなんか知らないっ!大佐は俺のなのーっ!」

引き剥がそうと鋼のの服を引っ張るアルフォンスと負けじとしがみ付きぶんぶんと小さな頭を横に振るエドワード。
おあ!やばい。
また股間が好反応をっ!!!

ちらと扉の方に目をやれば、心底呆れた表情の部下達がこちらを覗いている。
どうやら手出しは無駄だと察したらしいホークアイまで混じっていた。


「聞いてくれよ!アルったら酷いんだ、たいさを飼っちゃだめだって言うんだ!」

「当たり前でしょっ!僕は猫派なんだよっ?ましてやこいつ犬じゃないしっ!!!」


こいつとは酷くないかい?アルフォンス君…。てか飼うって…。

身長差のせいで首に抱きついたままぶらぶらとぶら下る鋼のを左腕に座らせるように抱いてやり、落ち着くようにぽんぽんと背中を叩く。
あまりにも可愛い姿に、現在の自分の表情を想像するのも怖い程、頬が緩みきっていた。

「わかったよ、姉さん。僕ちゃんと大佐に謝るから落ち着いて話そう?」

妥協案とでも言わんばかりにガチャリと音を立て肩を竦めるアルフォンスに、鋼のは涙こそ零れていないが赤く充血させて潤む金色の瞳をちらりと向けた。
しがみつく手は緩まず警戒心を解かない姉に痺れを切らし、私のすぐ前までやって来ると大きな身体をこれでもかと折りたたんで憎々しげに声を絞り出す。

「大佐、ごめんなさい…。」

「あ、ああ…。」

エドワードはじゃあ聞いてやるとでも言いたげに、それでも私からは離れたくないらしく、腕に力を込め私の身体をよじ登り始めた。
髪の毛をぎゅうと掴み、背後まで回ると肩車のように腰を落ち着け頭を抱きこまれる。

胸が…胸がっ!!!!
相当小振りではあるが、愛らしい存在感を後頭部にほにゃりと押し付けられ、我慢できずに壁に手を突く。

そんな私に気づかないのは鋼のだけだった。
無防備にぐいぐいとしがみ付く少女に、再び前屈みになれば物凄い批難の視線。


わかってる!わかってはいるんだよお前達!!
でもこれは無理だろう?ちょっと理性を保つの無理だろう???

体勢を整えようとしたのか、鋼のの小さな手の平が私の鼻先を掠め、ぬるりと滑った。

「たいさっ???」

すとんと肩から飛び降り、私の顔を覗き込もうとする少女。
心配そうに顰められた瞳に思わずぐっときて口付けしてしまいそうになるのを壁に頭を打ち付ける事で回避した。

ゴッゴッと鈍く響く音。

「やっ…!だめ、たいさやめて!」

力一杯やってしまった…。
軽く眩暈がするぞ。

ああ、鋼のは可愛いなぁ…。

「たいさが血だらけになっちゃったよ!誰かぁっ!」

額も割れたらしく、傷は大きくないのだろうが派手に出血してしまった。
鼻血と相まって私の顔は真っ赤に濡れているだろう。

ああ、そんなに揺すらないでくれ…。
たいしたこと無くてもフラフラしてきたよ、鋼の。

「ちょっと姉さん揺らしちゃだめだってば!!」

こんな時だけはとても理性的なアルフォンスの声をどこか遠い所で認識しながら、そっと目の前の小さな身体を抱きしめた。




「調子のるなってばこの変態っ!姉さん離せー!」









意識を失う直前に見たのは、アルフォンス・エルリックの鎧の頭部だった(気がする)。






END
頑張れマスタング( =ω=)

pana 2005/11/14






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