| 拍手御礼SS 『ロイ・マスタングの初恋』 |
最近妙に溜息が出る、胸が苦しくなって思わず胸元を握り締めてしまうほど。 落ち込んでみたり、急に高揚してみたり、精神状態も宜しいとは言えないだろう。 病気にでもかかったのか? 何かがおかしい。こんなことは初めてだ…明日の午後にでも少し時間を貰って病院へでも行ってみるか。 なーんて暢気に思っていたんだが。 ちょっとした事がきっかけで、少年だと思い込んでいた私の被後見人でもあり国家錬金術師である『鋼の錬金術師』が少女であったと知った。 誰も見ていない所で気配りをするような子なのは気付いていたけれど、隠れ蓑にするように取る横柄で尊大でガサツな態度にすっかり騙されていた様だ。 彼女は性別を隠していた訳でもなく、ただ聞かれなかったから言わなかっただけだと言い、これからも続く過酷な旅を思うと私もそれを受け入れざるおえなかった。 少女だと知っていたら私はあの時国家錬金術師になるという道を提示しただろうか。 今更何を思おうと胸を張って生きる彼女とその弟にとっては失礼な気がして怒ることすらできない。 少女だという認識で改めて見たエドワード・エルリックは蜂蜜色の髪の毛に前だけを見据える真っ直ぐな金色の瞳、普段はきつく結ばれているがふと微笑んだ時のぷっくりとしたさくらんぼ色の唇が肌の白さや美しさを益々際立てて、まだ13歳だというのになんとも言えない色香を伴っていた。 中尉に褒められて照れた表情、ハボックに頭を撫でられて膨れる頬、私が過剰にからかうとムキになって立ち向かってくるキツイ瞳。人体練成を行い失った弟の肉体と、その魂をこの世に留めるために失った右手左足、恐怖や絶望を知りそれを内包した心を知っているだけに私の彼女だと知る前からエドワードへの執着は異常ともいえたかもしれない。 私自身不本意ながらもイーストシティ1の女誑しの称号を持っていて、お付き合いした女性の数ももう思い出せないほど。 口説く事、酔わせるスキンシップ、褥までの甘やかな遣り取りはお手の物なのに。 彼女の姿やその色(それはトレードマークにしている赤や黒、彼女の象徴のような金色だったりするが)を見ただけで胸がぎゅっと鷲掴みされたようになり、長年で培ったポーカーフェイスも崩れかけ、息すら苦しいのだ。 こんな気持ちは知らない。 なんなんだ!苦しい、苦しい。 彼女達が旅に出ると少しの間落ち着くのだが、1週間も過ぎるとその感覚は倍以上になって帰ってくるのだから始末に終えない。 「大佐〜初恋の少年みたいな顔してますよ?」 にやにやと火のついていない煙草を咥えてハボックが書類を差し出しながら言った。 受け取った書類を握り締めたまま聞きなれないキーワードを頭の中で復唱してみる。 初恋?…初恋…。 はて、私の初恋はいつだったのだろうか? 初恋…。初めて恋人ができたのは12歳の時だったな。 相手は18歳の女子大生で脱童貞もその時だ。 無論告白はあちらからだったし、恋人とか年上の女性とかセックスとかいう子供ならではの貪欲な好奇心は全て満たされていた。 じゃあ初恋はいつだ?確かに好きで付き合ってはいただろう初めての女性も今思えば状況に酔っていただけのようだ。 はつこい…。 もしかしてこれは…私の初恋…なんだろうか……。 「た〜いさ〜?」 突然空いた手で口元を押さえながら思考の世界に飛んだ上司に何度も呼びかけるが返答は帰ってこない。 (まじで大佐初恋なんじゃねぇだろうな…) ハボックは呆れた目線を送りつつ確認して早急にサインが欲しい書類が所在なさげに握られていて立ち去ろうにも立ち去れない現状に立ち尽くしていた。 それは急激な変化、いや覚醒? 照れとも恥とも喜びとも取れるような表情で、普段イヤミと過酷な労働を強いる上司が顔を真っ赤にしてゴンと音を立てデスクに突っ伏した。 (アンタなんちゅー顔を!まさか…本当に初恋だったのか?そんなオチなのか??) ロイ・マスタング国軍大佐、27歳にして初恋を知る…。 |
| 拍手ありがとうございます。 心からお礼申し上げます。 少しでも気に入って頂けたら嬉しく思います。 現在拍手SSは二本のみです。よろしかったらもう一度ぽっちりしてみてくださいね。 次回予告。 『ロイ・マスタングの苦悩』でお送りしちゃいました! pana |
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