エド子長編にするつもりなかったのに長編。
Only For You,Only For Me act.6





「あ…おれ……。」

頭が混乱してる。
入ってきたのが大佐なんて、デートは?
あの女の人はどうしたの?

叩き落としてしまった暖かい手…。あの女の人に触れていたんだ。
吐き気がする。
頭が痛い。
そんな汚らわしい手で触れないで…。

俺だけの手じゃないならもう触らないで。



ああそうか、俺この人とはもう駄目なんだ。
触れ合えない。きもちわるい。



本当に?



「ごめんなさ…い…。」

痛かったでしょ?今俺右手で叩いた。
顔も上げられない。
怒ってる?

怒ってないはずないよね。

ごめんなさい。

痛い痛い痛い。
胸が痛い。叩いた手もとても痛い。おかしいな感覚なんてないのに。




「泣かないでくれ…私が悪かったから!」
「ないてる?おれが?」

ぼたぼたと音がしてるのに気がついた。
毛布に沁み込む水滴。いっぱいいっぱい落ち始めてる。
これ涙か?

「鼻水だよ、大佐。」

笑って?出て行って。
アンタの手を拒んだ俺を捨ててください。

「触れてはいけないか?」
「だめ、吐いちゃうから。ごめんね。」

ぼたぼたは止まらないし、いい加減鼻水止まれ。

ぎゅうと毛布を握り締めて奥歯を食いしばったら、がりと嫌な音が口の中でした。
間違えて噛んだみたい。鉄の味がする。じゅわじゅわ水分が溜まって余計に吐きそう。
そんなに深い傷になっちゃったのかな?

サイドボードにあったタオルを取って唾液と血を吐き出した。
うわ、凄い量。

「師匠のまねー、なんちって…あ、大佐はわかんないか。」
「切ったのか?見せ、て…触れてはいけないのか?なぁ、エドワード…。」




頼むから…と搾り出すような声。
なんでアンタ泣きそうなの?









「あれは、接待だったんだ。」

接待で腕組むの?

「うん。別に気にしてないし。」

嘘です。

「もうしないから。接待でも女性とは会わないようにする。」

もう遅い。

「気にしてないってば。アンタ大総統になるのに必要なんだろ?」

だからやだったのに。

「エド、エドワード…君だけだ…君だけなんだよ?」

聞きたくない。

「いいからもう。本当にいいから。」

出てってください。

「せめてこっちを向いてくれ!!」

あ、また血でてきてる。じゅわじゅわ。痛いなぁ。
なんで血の味ってこんなに不味いの?吐きそうだよ。

ぼたぼたじゅわじゅわ。

こんな情けない顔、直視されたくないっての。

「鼻垂れてるし、口血だらけだし。やだ。」

やだ。

「私はもうだめなのか?君に見つめても貰えないのか…馬鹿なことをしたっ!!!」
「アンタが野望の為にしたことだったら馬鹿じゃないだろう?」

真実そう思ってるから、それでも嫌だと思う気持ちがあまりにも醜いから。
俺は俺が嫌い。


「アンタに釣り合う女じゃなかったんだ。アンタが悪いんじゃない。」
「それを決めるのは君かい?」


ねぇ、お願いだせめてこちらを向いてくれ。





あまりにも痛々しい声を出すから、思わず見てしまった。
大好きなアンタの顔。






「馬鹿アンタ…なんで俺よりぐちゃぐちゃな顔してんだよ…。」

「君が触れさせてくれないから…。」



「だって他の女触った手で触れられるのが気持ち悪くて。」

「こっちを見てくれないし…。」



「こんな情けない顔見られたくなかったんだ。」



「二人きりなのに、もう名前すら呼んで貰えなくて…。」
「そんなの滅多に呼ばなかったじゃないか、今までだって。」



「エドワード、エドワード愛してる、本当だ。信じて…。」
「泣くなよ馬鹿。」



「馬鹿でも結構。信じてもらえるならなんでもいいっ!」



「信じてなくてごめん。」

「信じさせてあげられなくて…すまなかった…。」




ぼたぼたと涙を零しながら、震える手を俺に差し伸べてくる。
今度は振り払えなかった。

あんた誰?

俺に抱きついて謝罪の言葉を言い続けている。








ああ、あんたがロイ・マスタングだったのか。
温かい胸だね、やっぱり。







「…ろ…い……ロイ…。」






口に出してみた。
もう一回。

「ロイ…すき。」

怯えるようにビクリと肩を震わせて、俺の身体をぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。
温かい腕、胸。

「抱かれている間は暖かくて、愛し合ってるって夢が見られて幸せだったんだ。」

顔を上げて辛そうに顔を顰めるロイ。

「違う、ちゃんと伝わってなかった。愛してるのにちゃんと届けられてなかった。」

俺はこくりと頷いた。

「うん。伝わってなかった。声は聞こえてた。でもそれだけで幸せだった。
ここへ戻って来た時、何度かロイが違う女性と並んで歩いているのを見た。
いつも違う人、いつも綺麗な人。柔らかそうな温かい手が…ロイの腕に巻きついてた。」

全部話さなきゃいけない気がして、俺は必死で思いを言葉に乗せる。
痛い気持ち。でも幸せだった時間。

「俺にはロイと腕を組める柔らかい腕も、立場もないから…。」




苦しかったんだ。






鼻水じゃない。
ちゃんと涙だと認識して俺は泣いた。
誤魔化さずロイの目を見て。







「君の腕じゃなきゃ意味がないのに。他の女なんか本当は一緒に過ごすのも嫌だった。」


「俺も、ロイが他の女に触られるの嫌だった。」


「もう誰に頼まれてもしない、誓うよ。いやもうアルフォンスに誓ってきたんだ。
君を二度と悲しませないと。彼の血印に誓ったんだよ。」


「アル?……そっか…アルに…。」





愛してる…。
ロイの声が俺の心にじわりと沁み込んだ。





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らぶらぶしろこら。

pana 2005/10/22








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