| エド子長編にするつもりなかったのに長編。 Only For You,Only For Me act.5 |
軍用車も出さず、急ぎ足で向かった宿。 私らしくも無い、汗だくになって息も上がってる。 行き場のない想いが身体を突き動かしたとしか思えない。 じれったい。 どうしてこうも思う様に足が前に進まない? 心だけは追い越してゆく車よりも早く君の側へと急いているというのに! はぁはぁと肩で息をしてやっと着いた宿屋は、彼女と弟が好みそうな質素な佇まいだった。 彼等は無駄な出費を好まない。食事も、宿も、嗜好品すらも。 息を整える事もせず建物に滑り込めば、驚いて宿屋の主人が飛び出してくる。 当然だろうな、イーストシティでは良くも悪くも有名な国軍大佐が駆け込んできたのだから。 事件だとでも思ったのか、顔色も悪い。 「エドワード・エルリックの部屋を。」 「あの坊やは悪いことなんざしませんよ、マスタング大佐!」 「そんな事は知っている!」 彼等は素性すら明かさずに宿を取るのか。 「個人的に用があるだけだ。早くルームナンバーを…。」 主人は安心したようにほっと息をついて、肩の力を抜いた。 どうしてこんなにも愛されるのだろうね、君たちは。 部屋番号を聞きだすと、安普請な建築仕様と寝ているかもしれないエドワードを思い、ゆっくりと階段を昇る。 突き当たりの部屋。 一番日が当たりそうで少し安心した。 息を詰めノックをする。 三回叩いてみたが、無反応なので寝ているのだろうと踏んだ。 これ以上叩いて起こすのも可哀想だし、私はアルフォンスに許可を得てここに来ている訳だからと、自分を納得させて階下に再び降りる。 主人はまだそこにいた。 おそらく心配したのだろう。 少し余裕の出てきた私は、人好きのする笑顔を無理矢理顔に貼り付けて訳を話した。 「彼の弟君から看病を頼まれたんだ。ああ見えても私の大事な部下なのでね。」 「部下?あの坊主がですかい?」 ばらすのは彼等の本意ではないかとも思ったが、なんともばつが悪く、自己保身のために言い募る。 「そう、エドワードは国家錬金術師だ。」 「……鋼の錬金術師?」 思い当たる銘がそれしかなかったのだろう。まさかこんな身近に国民に最も愛されている有名人がいるなど思いつくはずも無い。 ただ少し不安はあった。 彼等は好かれていたけれど、軍属というだけで嫌悪する輩がいるのも確かだ。 「エルリック兄弟はいい子達でしょう?」 こんな事で追い出されたら、嫌われでもしたらとカマを掛ける。 「えぇ、えぇ勿論!とてもいい子達ですよ!ああ、そうだったのか…。」 主人は嬉しそうに頬を紅潮させぶつぶつと思い当たる事を呟いている。 内心ほっとした。彼等の定宿だと聞いているこの場所を追われるのは私にとっても悲しい事だったから。 「だから私も彼等が大事なんですよ。」 褒めちぎられる彼等を我が事のように照れくさく感じてそう言った。 「体調悪そうだったからさっき家の家内がお粥を作って食べさせましたよ、あと薬も飲んだはずだ。」 「そうでしたか、ありがとう。で、今弟の方が司令部で手伝いをしてくれていてね、私が代理で看病に来たんだ。」 「坊主も大事にされてるんだなぁ。」 子供を心配されて喜ぶ親のように微笑む主人に、まだ彼等が幼い子供なのだと思い知らされた。 私はその子供に本気で惚れて、傷つけ、その言い訳をしに来たというのに。 後ろ暗い気持ちを気取られないようにしなければ。 ヒューズといい、ハボックといい、こういう輩は得てして変な所で勘が良い。 「寝ているようでね、あまりノックするのも悪いから鍵を貸してくれないか?」 「ちょっと待ってくださいね。」 彼は元いた受付の奥の扉に入り、すぐに鍵を持って帰ってきた。 木の棒状になったキーホルダーのついたそれをしゃらりと私の手に乗せる。 私は小さく礼を言い、身を翻した。 再び立った扉の前。 今度はノックせずに鍵を差し込む。 ガチャと手ごたえを感じて、静かにノブに手を掛けた。 「鋼の…?」 もし寝ていたらと小声で問いかける。 返事はない。 ベッドの上の毛布が小さく盛り上がっていた。 周囲を見回すと、ベッドサイドに飲んだらしい薬瓶と水差し。 ふむ。と少し考え、とりあえず熱を見るために彼女の額に手を伸ばした。 指先が彼女の前髪をかき上げようと触れた瞬間、ビクリと反応する。 私は目を見開いた。 叩き落とされた手と、それよりも痛々しい彼女の瞳。 「触るな!!!」 ← / → |
| マスタングがびーん! pana 2005/10/21 |
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