エド子長編にするつもりなかったのに長編。
Only For You,Only For Me act.2





マスタング大佐と姉さんが付き合っていると気がついたのは半年くらい前だったろうか。
どんな駆け引きや遣り取りがあったのかは知らないけど、明らかに大佐が姉さんを見る目が変わった。
姉さんは色々ときちんとした大義名分を作ってはイーストシティに戻る旅に一泊から多くても二泊くらいどこか別の場所で過ごすようになり、そこから帰ってきた時だけ少し疲れたような、それでいて何か吹っ切れたようなそんな表情をしていた。



それは時はまだ想像でしかなくて、実際確信したのは本当に偶然。



あの日、姉さんは賢者の石を求める旅に何の足がかりも掴めないまま何日も何日も中央の図書館を渡り歩き、止めても徹夜を辞めてくれず食事すら取れなくなっていた。
疲れ果てて戻った東方司令部、無条件で優しさをくれるここの人たちに僕は心が癒されるのを感じていたけど姉さんは違った。
周りを見る事も立ち止まる事もできず、苛立ちと焦りで我を忘れて大佐に当り散らした。
それは後から考えれば『大佐だから』できた事だったんだろう。
咎める僕を中尉が執務室から連れて出し、姉さんはあの人と二人きりの部屋の中。


心配になって少ししてから僕はそっと部屋を覗いてみた。
そこには大佐の膝の上で安心したように眠る姉さんとこんな表情をする人なのかと衝撃を受ける程優しい瞳で姉さんを見つめながら背中を擦っている大佐の姿。

あまりにも穏やかな二人の世界に僕は見惚れた。
この人は姉さんを愛してくれているんだと、僕にはできない姉さんを安らがせる事ができる人なんだととても嬉しく思い、少しだけ嫉妬したものだ。

髪に、頬に、唇に落とされていく口付けも、姉さんには必要なものだと思ったからこそ関係を隠そうとする二人を黙って見守っていたのに。



何?なんなの姉さん。
二人は愛し合ってるんじゃないの?あれはポーズだけだったの?
どうして姉さんは平気な顔していられるのさ、どうして大佐は姉さんがいるのに他の女の人とお付き合いするんだよ。
僕には理解できない。あの時の大佐の表情は本物だった。


姉さんは一時の温もりが欲しかっただけなの?本当は好きじゃなかったの?
なんでそんな平気なふりしてるの…。





姉さんの前から走り去って僕はいつもの宿屋の前まで来ていた。
二人分でチェックインして荷物を宛がわれた部屋に置き、入れ違いにならないようにおばさんに託を頼んで外へ出る





来た道を辿り悪目立ちする赤いコートと金色の髪を捜す。
姉さんはすぐに見つかった。

僕の方が目に付きやすいはずなのに焦点の合わない瞳には何も映していないかのようで、僕は酷い思い違いをしていたのだと確信した。
なんて酷い事を言ってしまったんだろう。
姉さんは我慢しているだけで本当は大佐の事本当に好きなんだね。
何を我慢する必要があるのか、それは僕がまだ恋愛経験のほとんどない子供だからなのだろうけど全く理解できない。
あの時に見た二人には僕という姉さんの足枷も、軽く数ヶ月会えない事がざらな苦難の旅も超越しているような気がしていたから。




「姉さん…」

姉さんは振り向かない。
なんだ、あの人追いかけて来てもくれなかったんだ…。
僕が叫んだ声で気付いたと思ってたのにな。

「姉さん、顔色良くないよ?宿屋に行こう。」

手を引いても歩いてはくれない姉さんを僕は抱き上げた。

「…さっきはごめんなさい…。」

ぴくりと身じろぎ吐き出すように言われた言葉。

「……馬鹿、お前は間違ってないよ…。俺こそごめんな?」

嘘吐き。









珍しく大人しく抱かれている姉を見て、宿屋のおばさんが気付いてくれなかったら僕は姉の熱にすら気付かなかったんだろう。
なんて不甲斐ない鋼の身体。
特別に作ってくれたお粥を食べさせ、薬を飲ませると30分くらいで眠ってくれた。



「姉さん、少し足りないものを買いに行って来るから大人しく寝てるんだよ?」





一応声をかけて僕は宿屋をもう一度後にした。





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