| 1周年記念フリー小説 愛の力コブ続編 恋する力コブ 前編 |
「ひっさしぶりー!!………って、あれ?」 一ヶ月ぶりの東方司令部、逸る気持ちを抑えきれずに上機嫌で蹴り開けた司令室の扉の向こうには、目指す恋人の姿はなかった。 しん、と静まり返った室内に一人ぽつんと机に向かっていたフュリー曹長が慌てて立ち上がる。 「エドワード君!待ってたんです!!」 「曹長…なんか事件でもあったんか?」 こくりと頷き、神妙な面持ちで語られるこれまでの事件の経緯を聞き、俺は持っていたトランクを部屋の隅に放り投げて、取るものも取らずに走り出した。 慌てて追いかけてくるフュリー曹長はどうやら事前に帰還の連絡を入れてあったせいか俺の帰りを待つためだけに残ってくれていたらしい。 車を出すから門のところで待ってて、とだけ告げて別方向に向かう。 全力疾走した俺の足の速さに途中までとはいえついてきた曹長の姿だけで、事の重大さが見て取れて、心臓がどくんどくんと高鳴った。 門まで辿り着き息を整える。 ロイ………。 赤いコートの胸元をぎゅうと握り締めた。 無事さえ確認できればいい。 あとは俺がなんとかしてやれるから。 恋人同士になった最初の旅立ちの時、お守りにと渡されてからずっとそこに入れられている焔の錬成陣が書かれた手袋が、きしりと音を立てた。 三日前、定期連絡の為に電話をくれた小さな金色の恋人が、今日の帰還を告げてから死に物狂いで溜め放題だった書類を終わらせた。 無理矢理もぎ取った午後からの半休と明日丸一日の休暇。 あまりに必死でうっかり忘れていた財布の中身はカードと少量の小銭だけで、道端のワゴンで売られているちょっとしたジャンクフードを好むエドワードの為にと私服に着替えて銀行へ向かった。 軍内にも簡易銀行はあるのだが、約束の時間までにはまだ大分あって、時間潰しにもなると気楽に出たのが運の尽き。 エドワードには負けるがそこそこ可愛らしい窓口の職員に、必要事項を書き込んだ用紙を渡し、処理をしてくれている間、子供連れの女性と他愛ない雑談を楽しんだ。 4歳くらいだろうか、連れていた子供は女の子で撫でてみた茶色の髪は柔らかく、思わず笑みを浮かべる。 母親との言葉の遣り取りで、イーストシティも平和になってきたなー…などと暢気にじゃれついてくる幼女を座っていた膝に乗せた瞬間、扉の付近から不穏な空気を感じ気付かれない程度に息を詰めた。 何か規約とかでもあるのだろうか。 馬鹿の一つ覚えみたいに黒尽くめの集団、顔を覆い隠す布までも漆黒で、多少胡乱な目付きになってしまっても許して欲しい。 職業柄見慣れてしまっているのだ、このテの連中は。 「手を挙げろ!!」 陳腐な台詞に辟易しつつも、目で、気配で大まかな人数を割り出す。 銀行内に足を踏み入れているだけで6人か…いや、7人。 事前に潜入していたのだろう、一般客に混じって嫌に殺気立った銀縁眼鏡の男は仲間に違いない。 外にどれだけいるかは解らないが、せいぜい逃亡補助に1〜3人といったところか。 上手く警察か軍部に非常事態を伝えることさえできれば、あとは自分の部下達がなんとかしてくれるという確信があった。 中は己の身ひとつでなんとかなる。 この焔の錬金術師のお膝元で強盗などと、良く思いついたものだ。 後悔させてやろうじゃないか。 膝の上に乗せていた少女をそっと床に下ろすと、背中を押し、青褪めガタガタと全身を震わせる母親の腕の中へと帰してやった。 恐怖に慄きつつも、子供を守るように抱き込むのを見届け、胸ポケットに忍ばせている発火布を装着するために手をやれば………手をやれば………あれ? ごそごそと全身のポケットというポケットに手を突っ込んでみても、発火布が見当たらない。 「ああ…。」 軍服に入れっぱなしだった…。 発火布だけじゃない、銀時計もだ。 いくら一ヶ月ぶりの逢瀬だとしても浮かれすぎじゃないか。 まぁ体術だけでもなんとかなるだろうと高を括り改めて様子を伺う為に顔を上げた瞬間、大きな衝撃音と共に耳を劈く悲鳴と怒号。 役割分担でもあるのか、一人の男が近場に居た20代そこそこの女性客の腕を掴み、米神に銃を突きつけていた。 恋人だろうか、足元には同じくらいの年頃の青年が転がり、痛みに呻いている。 窓口に目を遣れば、支配人らしき年配の男がこちらに目配せしていて、おそらく軍部に連絡が入ったのだろうと肩の力を抜いた。 怪我人が出ている状況で、国軍大佐ともあろう者が何もせず外部からの解決を待つ訳には行かない。 だからと言って闇雲に戦いを挑むのはあまりにも無謀で、しかしあの子ならばそうするのだろうとふと胸が熱くなった。 早く終わらせてエドワードに会いたい。 私はゆっくりと立ち上がり、強盗犯達を刺激しないように慎重に足を前へ踏み出した。 この状況の中で、落ち着き払って歩み寄る私の存在にホール全体がざわめく。 とりわけ、強盗犯達の焦りは大きなものだった。 かつん、かつんと一定間隔を置いて響く靴音に、いかにも雑魚っぽい男が数歩下がる。 「ロイ………マスタング………!」 声を発したのは客達に混ざって私服で潜入していた銀縁眼鏡の男だった。 無論、この街で私の顔を知らない人間の方が少ないのだから、この程度の事は想定範囲内だ。 しかし、私の顔を知っていたのがその眼鏡の男だけだったようで、他の連中は私の名を噛み締めながらその記憶を辿っている。 「…ロイ・マスタング………焔の錬金術師か?」 「いかにも。私が焔の錬金術師、ロイ・マスタング大佐だ。以後お見知りおきを。」 「ちっ!スカしたツラしやがって!!」 殺気立った主犯格が銃のグリップを強く握り締めた。 横目で伺えば眼鏡も胸元に手を入れている。 他はどうやら恐れおののいて動く事も出来ないようだ。 私はふっと息を吐き、わざとらしく眉を寄せると肩を竦めてもう一歩踏み出した。 「私の部下達はとても有能でね…どうかな、この辺で降伏するというのは。まだ罪は軽いよ?」 あくまでも下手に出ている私の様子に余裕を取り戻したのか、人質を捕まえていた男が銃をごり、と音がするほど強く女性の米神に押し付ける。 「冗談じゃねぇ…こんなとこで捕まってたまるか!」 「この女がどうなってもいいのかよ。」 「ふん、全くお約束を違えないね。仕方ない、実はね、間抜けなことに私は発火布………焔を錬成する道具なんだが、それを忘れてきてしまったんだ。という訳で私は君達を攻撃することが出来ない。どうかな、その女性と私、人質を交代するというのは。」 「なんだと?」 「いや、私を人質に取れば強盗分プラス私の身代金も手にすることができると思うんだが。」 私との会話に夢中になっている強盗共は、既にこの建物の周囲が軍に取り囲まれている事に気付いていない。 全くとんだ即席強盗さんと言う訳か。 「黙れ!何を企んでやがる!!」 「何も?なんならボディチェックしてくれて構わないよ。私は手袋も銃も何も持ってはいないから。」 それだけ言って、どかりと床に座り込んだ。 主犯格は少し考え込み、にやりと笑ったのが覆面の上からでも頬の動きで解る。 それだけでこの男がまんまと私の口車に乗ったことが確信できた。 「あ、そうそう。私はこれでも軍人なので多少の反撃はできるんだ。腕を縛らせてやろう、その代わり早く人質を解放しろ。身代金は奮発してやる。」 「…ふん、まぁこんなに人質がいても邪魔なだけだしな…いいだろう、職員を一人残して後は全員解放だ。」 「待て、その前にボディチェックだろう?この野郎なんか嫌に落ち着いてやがる、何を隠し持ってやがるか解ったもんじゃねぇぞ。」 目の前でこの後の展開を大声で話し合っている滑稽さを、次の瞬間私は笑うことができなくなった。 主犯格の目配せ一つで、中でも一番屈強そうな筋肉質の大男が、後ろから私の両腕を拘束したのだ。 「乱暴せずとも私は何もしないよ?」 「ボディチェックしろって言ったのはお前だろ?」 正面からにじり寄る男の下卑た声色。 そのまま襟首を捕まれ、私の上着はワイシャツごとボタンを引き千切られ、見事に前を全開にされたのだった。 「裸に剥いちまえば隠せる場所なんかケツの穴ぐらいじゃねぇか。」 そのままの勢いでベルトに手を掛けられる。 一体外の連中は何をやっているというのだ! ちらりと伺って見ても動く気配は感じられず、反撃に出るか、このまま恥を享受するか思い巡らせた。 「安心しろよ、俺達そのケはねぇから。」 「…そうかい?それは助かったよ。」 余裕の表情は崩さないまでも、こんな姿を愛する彼女にだけは見られたくない。 ちりちりと音をたて、ゆっくりと、まるで私の羞恥心を煽るように下ろされるファスナーを私はまんじりともせず目で追っていた。 / → |
| これじゃロイ受けだろとか思った皆さんすいません、全く違うんで(笑) 鬼畜陵辱一切ないんで。 ロイエド子ですから!ロイエド子!! 皆様この一年ありがとうございました! まだまだがんばりますのでよろしくおねがいしますー! お持ち帰りはご自由に、しかし著作権は私、panaにございます。 明記お願いします。 2006/8/17 |
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