20万HIT記念集中連載06-3







二人のデートといえば。
ロイが帰ってくるエドワードを連れて行ってあげたい場所や、休憩室で小耳に挟んだ楽しいと評判のデートスポットをそれはそれは幸せそうに綿密に計画して、しかしいざ実行に移そうとすると、短い時間をたまたま目にした気になるものを観察してしまったり、延々錬金術談義に花を咲かせてしまったり。
決して思惑通りに進んだことなど無かった。
それは隠れているつもりなのだろうが、少し離れた場所で恋人の弟、アルフォンスが尾行をしているせいでもあったし、そうする事がデートと同義である程にお互いを高揚させる楽しいものであったから。

とにかく、こうして誰に束縛される事も無く、二人明確な目的を持って歩くなどということは初めてだった。

ましてや、目指す先はロイの家。
目的などたった一つ。


身体を繋げ、愛をより深く確かめ合う。


非常に即物的で、一見ロイだけの爛れた願いのようであったが事実は全く違い、お互いが望んだ結果なのだから、行く道すがら自然と手を繋いでしまっていても、小さな少女だけでなく、世慣れた大人の男までもが頬を染め、動きがロボットのようにギクシャクしてしまっていたとしても仕方の無い事だった。

緊張の為か、エドワードの小さな掌はじんわりと汗が滲んでいて、心なしか震えているようにも感じる。
ロイ自身、こんな気恥ずかしい状況は初めてで、心拍数や発汗具合は然程変わらないものだった。

心から愛する人と肌を重ねるのが、こんなに神聖な儀式のようなものだとは…。

無駄に経験値ばかりを積んでしまい、本物の恋とは無縁だった男はそっと嘆息する。
漸く手にすることができる少女の身体に無体を強い、貪り尽くしてしまいそうで、自戒せねばとエドワードと繋がっていない左手をぎゅっと握りこんだ。

突発的に巡って来たこの幸運に、そういえば家の中は綺麗だっただろうかと今更ながらに思い起こす。

掃除は独身男性の家なのだから多少は我慢して貰おう。
洗濯物はクロゼットに詰め込んであるから開けられでもしない限り見られてしまう可能性は無い。
キッチンは湯を沸かす位しか使っていないから安心だ。

………安心だ?
いや待てよ、冷蔵庫の中に食材などあっただろうか?
一般家庭にそれほど普及していない冷蔵庫という名の文明の利器が今まで酒以外を身の内に入れた事等無かったはずだ。
せいぜいあったとしても酒のつまみのチーズだの生ハムだので…。
そういえばこの間ヒューズが出張ついでにと連絡も無しにやってきてぎっしりと詰め込んであった酒を一本残らず飲で帰った。
つまみもシンクの下に仕舞い込んであったいつ手に入れたかすら覚えていないコンビーフの缶詰まで綺麗に平らげていたはず。
その後は面倒で買い足す事すらしていない。


「エディ…何か食べ物を買いに市場へ寄って行こう?」

「市場?あんで?」

「突然だったのでうちは片付けていなくてだね…。」

「独身なんだからそんなもんじゃねぇの?」

「や、そうなんだが…冷蔵庫にも保存庫にも食材が何一つ入っていないんだよ…。」


すまなそうに肩を竦めて見せた恋人に、エドワードは呆れたように言った。
少し怒りが混じっていたのは気のせいではないだろう。
でもそれ以上に、突き出した唇が、照れて赤く染まった頬が可愛くて、続く口汚い言葉も全く気にならなかったのだ。

愛とは人を変えるものである。


「あんた、いつも家では何食ってるんだよ?」

「…や、外食したり食堂で済ませたり…家では滅多に食べない…かな?」

「人には健康管理に気をつけろとか言ってテメェはその様か!全く相変わらずどっか抜けてやがんな。」


ぷりぷりと乱雑に足を動かし、不機嫌も露に歩調を早めたエドワードは、きゅっと繋がれた手を握り直し、方向を変えた。
それはこの場所から一番近い市が立つ広場の方角で。


「今夜は…俺が作ってやる。」

「エディ…っ!」


不機嫌を装い小さく呟かれた言葉に、ロイは破顔したのだった。





調味料、油、粉類、野菜と、ロイの片手は重い荷物で塞がれた。
エドワードが機械鎧の右手ならば重くても大丈夫だと抗議してみても頑として譲らなかったせいで、今その右手にはバケットやら果物やらと軽めのものが握られていた。

それでも二人の繋がった手は離れる事無く。

ロイの左官専用に用意された官舎に到着した頃には既に2時を回っていて。
一人住まいにしては大きすぎるその外観にあんぐりと口を開いた恋人を幸せそうに横目に見つつ、ロイは銀色の鍵を鍵穴に差し込んだ。

ぱちぱちと小さく弾けるような音がして、慌ててロイの手元を見ると、余韻のように火花が散っているのが見え、エドワードは抜き取った鍵をロイの手からもぎ取り、まじまじと見詰める。


「これ…何か仕込んであんのか?あ、ここに錬成陣!!」

「そう、ちょっとした仕掛けがしてあるよ。」

「すげぇ…!なぁこの鍵ちょっと貸してくれよ、俺調べたい!」


楽しそうに鍵をちゃらりと揺らすエドワードは好奇心に金色の瞳を益々輝かせた。
しかし、ひょいと取り上げられてしまって不満げに頬を膨らませて。


「いいじゃん、俺悪い事しねーし!けちー!!」

「これは駄目だ。あとでスペアキーをあげるから、それを持って行きなさい。返さなくてもいいからゆっくり調べられるよ。」

「すぺあ?」


きょとんと小首をかしげたエドワードはその一瞬後、言葉の真意に気付き、顔を真っ赤にしてわたわたとその場で落ち着きを失くす。

危うく抱えている袋から、バケットが落ちそうになり、慌てて両手で持ち直した。


「う〜〜…。」

「恥ずかしいかい?」

「う…うん。でもそれよりも…嬉しい…かもしんね。」

「そうか、それは良かった。」


ロイは持っていた鍵を再びポケットに仕舞い、扉を開けるとそっと恋人の背を押して中に通してやる。
玄関もちょっとした広い空間になっていて、エドワードは物珍しそうにきょろきょろと忙しなく視線を動かしていた。


「キッチンはこっちだ。荷物を置いてしまおう?」

「そうだな。…そういえば料理道具とかあんのか?」


いざとなったら俺がこれで適当に作るからいいけど。と片手だけで手を合わせる真似をし、それは必要ないと笑った。

前任の左官がここを出る時に、必要の無いものは全て置いて行ってくれた。
その中にはキッチンの料理道具一式があって、一人で暮らす分にはロイにも必要の無いものではあったのだが、今となっては有難い置き土産だ。

寝に帰るだけの官舎が、愛する人の存在一つで何にも勝る幸せな空間に変わるなど、思ってもみなかった。


買い込んで来た野菜やら肉やら果物やらを全て冷蔵庫にしまい込む。
開けた瞬間のエドワードの表情は驚きよりも呆れの色の方が強かったが、それすらも可愛いので手際よく動く小さな背中を少し離れた場所から見守り続けた。


「よし。」

「終わったかい?」

「うん。空っぽだったから仕舞うのも楽だったぜ。無駄にでかいなこの冷蔵庫…。」


仕舞い終わった後も、エドワードは物珍しそうに冷蔵庫を色々な角度から見詰めている。
電気は通っているが電話が普及し始めたのがここ数年というリゼンブールでは医療用に購入した業務用のものがロックベル家に来たのが最初で、記憶している限り最後だった。

確かその日は村の人間の大半がロックベル家に集まって、電源が入って内部が冷えるのをじっと見守っていたらしい。
気になって仕方が無かったエドワードとウィンリィが、止めるアルフォンスを振り切って大人に隠れ何度も扉を開けて確認するために中が冷えず、気付いた大人たちに散々叱られた、と、面白おかしく話してくれたエドワードの幼き日の思い出を、一緒になって笑いながら聞いた。


ふと、会話が途切れる。


立ち話も何だしお茶でも入れようかと、先程買ってきて冷蔵の必要でない物が並べられているダイニングテーブルの上に視線を動かしたせいだ。

確かに喉は渇いていて、潤いを欲しているのだが…それは本当に紅茶なのだろうか。

ロイに背を向け、どこから出したのか薬缶を片手に持ったエドワードがそれを水道の水ですすぐ。
他のものには自信は無いが、唯一自分で飲むコーヒーの為だけに毎日使っていたため、そんなに埃は被っていないのだろう。

片付ける時に脱いで椅子に掛けた為、コートを身につけていない少女の尻がぷりぷりと動きに合わせて揺れた。

水を溜め、コンロの上に乗せて火を点けようとした手を、男の大きな手がそっと覆って。


「大佐?」

「エディ…今はお茶なんかより…。」


君が欲しいよ。


ぎゅっと背後から強く抱き締められ、囁きは欲望に濡れた吐息と共に耳に吹き込まれる。
ぞくんと背中に走ったのは、くすぐったさか快楽か。
それでも、自分からは切欠など作れるはずの無かったエドワードにとって、待ち望んだ瞬間でもあった為、大人しくされるがままになった。







おまけ4(R)
お題提供元様→



自分の馬鹿馬鹿!何楽しそうにチャーミーグリーンとかしちゃってんだ!
長いはずだよ、まだエッチまで届いてないじゃん。・゚・(ノД`)・゚・。
(しかも長い)
次のエッチ開始も同じ位の分量あるのに先っぽも入ってない現実に打ちのめされるorz

もう少し、お付き合いください・・・お願いします。


2007/4/16 pana








(C)2005-2007 Only 4u<Pana> All Rights Reserved