20万HIT記念集中連載05-1







標準を遥かに下回る小さなエドワードの身体は、ロイの腕の中にすっぽりと納まっていた。
すりすりと胸元に頬を摺り寄せると、思いのほか心地よくてうっとりと目を細める。
見たことのない可愛らしい仕草に、ロイは恋情を再確認し、悦に浸った。

過去に沢山の女性達と浮名を流したが、これ程までに暖かい気持ちで触れ合った事など一度としてなかったのだ。


「大佐、あったけぇ………ん、あれ?」

「どうした?」


ぱちり、と伏せられていた目を見開き、まじまじと見詰める。
顔を寄せ。

くんくんと鼻を鳴らした。


「なんか汗だくじゃね?」

「君を探して走り回っていたんだ。あの後からずっと。」

「俺を?」

「君こそ一体どこにいたんだね。ここは危険な区画なんだから立ち入り禁止と最初の頃教えたことがあっただろう?」


エドワードが国家錬金術師の資格を得てすぐ、イーストシティの治安についてロイやホークアイから説明された内容の中に、まだ幼い子供に対しての親心だったのだろうか、繁華街や色街、今いるこの場所のような年齢に相応しくない、危険な場所も教えられていた。
当時はアルフォンスと二人肩を並べて、緊張しつつも真剣に聞いたものだったが、旅慣れてしまった今、通らずに回避できない事も多々あったために気にする事もほとんど無い。

あからさまに眉を顰めるロイにエドワードは頭をぽりぽりと掻いて見せ、えへへと笑って誤魔化した。


「君は女の子なんだから…気をつけてくれたまえよ。私の為にも。どうしても行かねばならない時は必ずアルフォンス君も伴う事。いいね?」

「大佐のため?」


きょとんと上目遣いに首を傾げる姿に、思わずちゅっと口付ける。
せっかく戻ったばかりの顔色がまたしてもぽんと赤くなってしまった。

あんなにも強引なアプローチを繰り返していたくせに、実技となると初々しいばかりのエドワードに益々愛しさが募ってゆく。


「私のため。心配してるんだ、これでも。」

「でも、俺強いよ?」


にっこりと笑うエドワードをもう一度抱き寄せようとした瞬間、二人の足元で、ごっと鈍い音と共に蛙が潰れるようなうめき声がした。


「ほら、片手足機械鎧だし。」

「………。」


恐る恐る音のした方に視線を向ければ、どうやら気絶から覚めたらしい男が何かをしようとしていたのだろう。
涼しい表情のまま、左足で思い切り頭を踏みしめていて。

確かに強い。
いっそ軍人になってくれたらさぞや功績が挙げられるであろう程に。
だが。

ロイは大きく溜息を吐き、蜂蜜のように甘い色を放つ髪に触れて胸に抱き込んだ。


「強いのは解っているとも。私が心配しているのはそういうことではなくて…。まぁいい、それはゆっくり教えるとしよう。」

「?」

「そろそろ司令部に戻ろうか。」

「こいつは?」


少しだけ身を離し、上着を腕に持ち直すと、つんつんと爪先で昏倒している男を突付くエドワードに苦笑して見せ。


「君も知っているだろう?こんなのは日常茶飯事なんだ、いちいち連行するのも面倒でね。」

「えー…だってこいつ大佐を狙った不届き者だろ?俺は許せねぇな。いいや、俺が運ぶよ。」

「こんな大男をどうやって…。」


にやりと不敵な笑みを浮かべ、少女は胸元でパンと両手を合わせた。
塀の傍に捨て置かれた木箱に触れると、バチバチと激しい音を立てて美しい錬成光が溢れ出す。

目を細め成り行きを見守っていると、男は木箱から錬成されたのであろう荒縄で全身を拘束されていた。

鋼の右手で背中の辺りの縄をぎゅっと握り締め。


「引き摺ってく。」

「またか…。」

「右手なら問題ねぇよ。ちっと重いからこいつの怪我は増えてるだろうけど。」


だって俺の大佐の命を狙いやがったんだぜ!
憤るエドワードの口からぶつぶつと零れる言葉は、ロイへの愛情に溢れていて、それがどんなに不穏な形であったとしても嬉しいばかりだった。


「じゃあ邪魔だから表通りまで運んで憲兵を呼ぼうか。」

「うん!」

「手伝うよ。」


どうやらこれが初めての二人の共同作業になったようである。


結構な距離があったので、表通りに着いた頃には男は全身傷だらけで、何故かズボンまで脱げてしまっていた。
どこかに落としてきてしまったのだろうが、引き摺っているモノがモノであるというのに始終甘やかなムードで会話を交わしていた二人はそれに気付く事もなく、気付いた現在もどうでもいいので放っておいている。

ぽいと捨て置き、丁度通りかかった巡回中の憲兵に引き渡す。

巡回する時は必ず二人以上で組み、行動を共にすることもあって、運ぶのは問題なさそうだ。
突然現れ、罪人を引き渡されたのが、東方司令部の実質上最高司令官でもあるロイ・マスタングだったのもあり、酷く緊張した面持ちで職務を全うすべく男を軍用車の後部座席へ乗せていった。


「ふう。これでよし、と。」

「あの縄は彼らでも外せるのかね。」

「繋がってるから端は無いけど原材料木だし、鋸でも何でも使って切っちまえば大丈夫だと思うぜ。」

「そうか…。」


あのぎっちりと身体に食い込んでいる縄のどこに鋸を差し込むというのか、少々不安は残ったが、目先の幸せを優先させるべく、ロイは考えるのを止めた。
少女に向けて恭しく右手を差し出し。


「司令部に帰ろう。皆も心配しているよ?」


その手の意味に気付いたのか、エドワードは恥ずかしそうにきょろきょろと周囲を見回した後、きゅと握り締めた。

手を繋ぎ、二人並んで歩く。
小さな掌の柔らかさや温かさ、照れて俯くとちらりと覗く襟足も、ひょこひょこ揺れるアンテナも何もかも全てが愛しくて仕方が無い。

夕暮れから夜のに変わり、風が冷たくなってきて、汗が急激に冷えたのかぶるりと震える。

持ったままの軍服を着込もうと少しだけ手を離し、立ち止まった。


「エディは寒くないかい?」

「俺は丁度いいくらい。」


夏でも長袖のジャケットとコートを手放さないエドワードには一番今が丁度良い季節のようで。
それでは、と両手で上着を広げ袖を通して前を閉めると、再び手を繋ごうとエドワードの方へ手を差し伸べると、突然何か柔らかな物にそれを包み込まれてしまった。








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ありがちにお話は進んでゆくのですよ。
エッチのおまけもつけようかと画策中。そうすると後二話かなぁ。


2007/4/12 pana








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