ロイ×エド子短編(既にシリーズ化?)
小悪魔志願 未来展望・前編
※黒アルが苦手な方はすぐさまUターンしてやってください、お願いしますorz





















旅から戻りイーストシティ駅に降り立ったとある昼下がり、トラブルメーカーの異名を持つ俺の目の前でひったくり事件が発生した。
軽い気持で逮捕協力しようと、犯人を追うために石畳を蹴ったのがそもそもの始まり。







「しくった。」

「馬鹿姉!か…っ、かっかっかっ…」

「おい、変な笑い方すんなよ。キモイぞお前。」

「なんだよそれ!そうじゃないよっ!!顔に傷なんか作って、もうっ!」

「わり…。」

怒りだか心配なんだか、まぁどちらもなのだろうが、綯い交ぜになって震えるアルフォンスの声を聞きながら苦笑する。


「でもたいした怪我じゃねぇし。」

「は?血いっぱい出てるんだよ?」

「大丈夫だって、頭部だから出血が多いだけで…。」

「どうすんのさ!こんなの大佐に見られたらあの犯人命ないよ??」

「げ…。」


俺は慌てて額を袖口でごしごしと擦った。
じくりと痛み顔を顰める。
それでも気にせずに擦り続けていると、慌てて腕を掴み止められた。


「触らないで!」

「うー…結構痛ぇ…。」

「当たり前でしょ?とにかく司令部行って手当てして貰おうね。」

「えー…ってうおおおおっ!!!」


大きな鎧の二の腕にひょいと抱き上げられ、俗に言うお姫様抱っこで歩き出すアル。
確かに俺はち…ち…ち…ちぃさ……さ、くてお前は鎧だからでっかいけどさ…姉としてはちょっと屈辱だぜ。

降ろして貰おうと必死でもがいても無駄なのは承知だ。
黙ってされるがままに身を任せていると、アルフォンスが黒い声を小さく空洞の中で反響させた。


「姉さん、大佐に会ったら抱きつくんだよ?」

「あんで?」

「『こわかった…たいさぁ!』とか言ってね。そんで震えて胸に顔を埋める、解った?」

「………はい。」


涙も浮かべられたらBESTだからね。
と、何故か途中にもしやそれは俺?っていう物真似を織り交ぜ熱弁を揮う。
アルフォンスのあの計画は今でも進行中なのだ。
寸分の隙も見逃さないのは凄いと思うのだが、散々暴れて、取り押さえたひったくり犯は過剰防衛ギリギリなほどボコボコにしている。
警察の管轄とは言え、大佐のところにだってある程度の情報は流れてしまうんではなかろうか。
簡単に騙されてくれるほど大人は甘くないのだ、と思いたいけど思えないのはころりと俺のへたくそな演技にまで騙されてしまっている現実があるからで。
それが弟の視界にフィルタでもかけてしまっているのではないかとすら思っていた。

皆頭悪いのかな…。(特に大佐)

俺はがくりと肩を落とすと、鎧の胸に頬を寄せた。


「あ、それいいね!そのままでいてよ?」

「……わかった。」


抵抗する余力すらない。

アルフォンスの声はわくわくと楽しそうで、それでいて足取りは既に演技が始まっているのか慌てたように忙しなく、そうこうしている内に司令部まで着いてしまった。
抱かれたままで銀時計だけ提示して中に入る。
するとアルフォンスはまさに血相変えて走ってきましたと言わんばかりに息咳切り始めた。

お前呼吸しないんだから凄く不自然だぞそれ…。

ノックもせずに蹴り開けられた司令室詰め所の扉。
蝶番がイカれたのかきぃきぃと悲しい音を立てている。


「大佐!…姉さんがっ!!はぁっ、はぁっ…」

「アル?どうした…っておい大将大丈夫か?!」


俺の血を見たからか青褪め大声で騒ぎ出すハボック少尉の声にその場にいた全員の視線がこちらに向いた。
生憎と室内に大佐の姿は無く、アルフォンスは俺にしか聞こえない程小さく舌打ちをする。

そんな真っ黒なアルの行動に、俺は今までの育て方を思い起こし、じんわりと湧き上がる涙を隠すことができず、それは悲しいことに弟の思惑通りの演技(演技じゃない!)をしてしまうことになった。

つんと痛む鼻は赤くなっているに違いない。
少し離れた場所にいた皆にも確認できる程度には。
心配してわらわらと集まってくる彼らに本当の事など言える筈もなく、俺は顔を隠すようにアルフォンスの摺り寄せて隠した。


「とにかく大佐を!」

「内線使え!」

「はい!」


耳に届く会話。
あの男が来てしまう。それもきっと1分もかからずに…。

予想は外れることもなく、ほんの30秒程度でこの部屋がびりびりと振動するほどの音を立てロイが駆け込んできた。
その後ろには少し遅れて彼の副官も姿を見せたようだ。

大股で歩いているのだろう、足音はほんの数回で俺の髪に大きな暖かい手が触れた。


「どうした鋼の?」

「………。」


覗き込んだ大佐にも俺の髪にへばりついた血が見えたのだろう、息を飲んだ気配。
アルフォンスが俺の服の端をつんつんと引っ張り合図を送る。
俺は諦めて一回ぐっと唇を噛み締めて顔を上げ、悲壮感たっぷりに両手を差し出した。


「たいさぁ…こわかっ……」

「酷い血じゃないか!ああ、おいでエディっ!」


アルフォンスの手から俺を受け取り、優しく抱きしめてくれる大佐に、激しい罪悪感が湧き上がり、とうとう瞳から涙が零れて落ちた。
本当にごめんなさい。


「一体何が…いやそれより中尉、原因をアルフォンス君から聞いておいてくれ、後は任せる。」

それまで黙って後ろに控えていたホークアイが短く了解の意を表すとロイは俺を大事そうに横向きにして抱き直し扉に向かう。

ロイの肩越しに見たギラリ光る鷹の目を俺は一生忘れない。
まじで怖ぇ…。


「じゃあアルフォンス君、話を聞かせて貰えるかしら?」

「はい!」


その殺伐とした雰囲気に、司令室にいたアルフォンスを除く男性陣全員が竦みあがっている。

確かにナイフを振り回したのは犯人だが怪我をしたのは俺自身の不注意で、どうか犯人が殺されませんようにと、ただ祈ることしかできなかった。

ふっ、と不敵に笑う大佐の吐息が耳にかかる。


「中尉に任せておけば安心だ、さぁエディは傷の手当てをしようね?」

「う………ん。」






こうして緊張感漂う司令室を、俺は大佐に抱きしめられたまま後にした。







後編へ
掌間違ってもこれエドワード小悪魔じゃないっすよね。
むしろ一番優しいいい子ですよ(笑)
まぁ最初と変わっちゃうのは良くあることってことで(笑)

pana 2006/9/13








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