ロイ×エド子短編(三部作予定ですが非連載)
小悪魔志願 side:R
※珍しくエド子が黒いかもしれません。苦手な方はUターンしてやってください。





















「人払い…………頼めるか?」


普段、気の強さを隠しもしない金色の子供が珍しく殊勝な態度でそう言った。








少年は11歳の時私自身が見出し、最年少で国家錬金術師の資格を得た、謂わばとびきりの天才児である。

人体錬成という咎を背負い、それで失った右腕、左足、弟の肉体を取り戻す為、機械鎧に身を窶し果ての無い旅をしている。

トラブルメーカーで跳ねっ返り、口も悪く喧嘩っ早い。
そんな彼が1年無事に旅を続けられたのはひとえに私のフォロー(揉み消したり報告書を多少改竄したり)の賜物だと自負している。

戻ってくれば挨拶もせず憎まれ口を叩き、国軍大佐である私を遥かに上回る尊大な態度を取るものだから、目の上のタンコブのようであるかと思えばそうでも無く、与えた任務は完璧以上にこなすし、民衆からの支持もうなぎ登りだ。
無論、そのお陰で私自身も意図する訳でもなく恩恵に与っている部分があり、過剰にからかい過ぎたりはするのだが邪険に出来よう筈も無い。

時折見せる歳相応の態度や、可愛らしい笑顔に癒され、私を含めた腹心の部下一同がかの兄弟を大切に思っていた。


だから、伏せられた金色の瞳とか、竦められた肩が、ただでさえ小さな彼を益々小さく見せて、ぎゅうと胸が締め付けられたのだ。


「それは構わんが…どうしたね?他の連中には聴かれたくない事かい?」

「ない………っていうか……、うん、そうかも。」


私は副官と、たまたま書類の整理の為に執務室に居たハボック、ファルマンに目配せして退室させた。

一様に少年に心配そうな視線を投げかけていたのだが、選ばれたのは私なのだから仕方ないだろう?
胸に湧き上がる奇妙な優越感を、気付かない振りで心の底にしまい込み、鋼の錬金術師と向かい合った。


「で、どうしたんだね?困った事があるのなら遠慮なく言いなさい。君は人を頼らな過ぎる。」

「う…ん、ちょっと確認したい事があって…。」

「ないだい?」


もじもじと真紅のフラメルのコートの裾を指先で弄びつつ、きゅっと口を噤む姿はとても愛らしく、凶暴な鋼のとは思えないほどだ。
中々発言しない口許に目が釘付けになる。
緊張の為か、無意識の内に何度も舌で唇を濡らす仕草が妙に色っぽくて。
ぷるんと瑞々しいそこを舐めたらどんなにか美味だろう…とか、そんな如何わしい自分が情けない。


「一年もここに通ってんのに…さ、今更な事なんだけど………聞いても笑わない?」


顎を引き、上目遣いで投げかけられた視線に胸が高鳴った。


「あ…あぁ、勿論笑わないとも…。」


目の前の子供の不思議な色気はなんだろうか。
ごくりと唾液を飲み下すと、酷い咽喉の渇きを覚えて、執務机の上で冷め切っていたコーヒーに手を伸ばし一口含んだ。


「俺ってもしかして…皆に男だと思われてたり……する?」

「はっ?」


笑おうと思っても笑えない、笑えるものかね君!


「何を言っているのかね?君は…だって身上書にも男と…。」

「嘘!俺ちゃんと女って書いて提出したよ!!」

「馬鹿な…。」


私は慌てて立ち上がり、書棚の一番上段にあった鋼の錬金術師に関するファイルを引っ張り出し、少々乱暴に開いた。

一番最初のページ、身上書の複写だ。
マスターは当然中央の大総統府で管理されており、手にすることは叶わない。
コピーであるその紙の性別欄には、確かに『F』に丸がされており、何者かが横線を引いて、ご丁寧にも訂正の割り印までされて『M』に書き直された痕跡があった。


「………ありえん………。」

「受け取ってくれた姉ちゃんが間違いだと思って直しちまったのかなぁ…。そう言えばなんか誤解されてたような記憶もあるし…。」


しょんぼりと項垂れた少年………いや、少女は、そう認識して見れば確かに少女としか言えない風貌で、実際先程然り、何度もどきっとさせられたりしていたのだ。

今まで気付いてやれなかった自分を殴り倒したい気分になった。


「ねぇ、ってことは…大佐も俺の事男だと思ってたってこと…だよ、ね…。」

「…すまなかった……。」


男名だからとか、口の悪さとか態度のでかさとか腕っ節の強さにすっかりフィルターがかかっていたのだろう。

鋼のはぎゅっと唇を噛んで眉尻を下げた。
今にも零れ落ちそうに湧き出した涙が、瞳の色を映して蜂蜜のようにきらめく。


「鋼の…っ!!」

「おれ…っ………おれ女の子なのにぃ……。」


潤んだままではいくら睨まれても可愛らしいだけ。
ぼっと見惚れていたせいで、咄嗟の判断が遅れでしまった。
エドワードの早急な動きに声を出す事も敵わず、ただ立ち尽くす。

少女は勢い良くフラメルのコートを脱ぎ捨て、上着に手を掛けた。
それは着慣れているだけでなく、金具一つで止まっていたのでほんの短い一瞬だった。

アンダーの黒いタンクトップがぬけるように白い肌とのコントラストを醸し出し、とても淫らでいやらしい。


「おれ…おんなのこだもん…。」

「解った!解ったから止めなさ……」


タンクトップがズボンから引き出されてから床に落ちるまで、まるでスローモーションのように目に焼きついた。

下着をつけていないそこには、初々しくも愛らしい小振りな乳房。
手を下ろすとぷるりと揺れて、二つの薄紅色の突起が綺麗に中央に収まる。

私は慌てて背を向けた。
鋼の腕を繋ぐボルトや、大きく痛々しい傷跡までが余りにも美しく、私の雄の本能を揺さぶったから。


「汚いもの見せて…ごめん……。」


搾り出すような、とても悲しい声だった。


汚い?汚いはずなどあろうものか。
こんなに綺麗なものを私は他に知らない。


誤解を解きたくて、意を決して振り向くと、俯いて肩を震わせるエドワード。
立ち上がり、歩み寄る。
私は軍服の上を脱ぎ、彼女にかけてやった。


「違うんだ…目を背けたのは君が余りにも美しかったからだよ?」


瞬きしたのか、涙が一粒落ちて絨毯の色を変える。


「本当なんだ、どうにかなってしまいそうで…怖くて背を向けた。すまなかったね。」


顔を上げたエドワードは、眉尻を下げたままではあったが、微笑みを浮かべていた。
その表情が余りにも切なくて、思わず手を伸ばす。
こんな表情は見たくない、させてはいけないと…胸の中に抱き込んだ。


「…やっぱり噂どおり、誑しなんだなアンタ。」


呆れ半分にくすくすと笑いながら口にした言葉は、かなり心外なものだったがそれでもいい。
この子が笑ってくれるのならば。


「でも……ありがと。嘘でも嬉しかったぜ?」


最後のほうは囁きに消えた。
しっかり聞こえていたけれど。

すり、と胸に頬をすり寄せてくるエドワード。
なんて可愛くて愛しいんだろう。
初めて沸く感情に戸惑った。一生守ってやりたいだなんて…。


「キス……しても良いだろうか?」

「へっ…?あっ………んぅ…っ!」


答えを待たずに唇を塞いだ。
いきなり舌を入れるなど、この金無垢の少女には遣り過ぎだと思ったが止められない。
自嘲の念に唇を歪め、逃げ惑う小さな舌を絡め取る。
角度を変えて呼吸を促せば、可愛らしい鳴き声が鼻から漏れて、体温は上昇の一途を辿った。


「……ん……ふ…………ぁっ」


ぐちゅりと音を立てて唾液を流し込むと、すぐさま白い咽喉が上下して、飲み込んでくれたのだと喜びに震えた。

ずるりと力が抜け、体重を腕に感じて、名残惜しげに唇を解放する。


「…たぃ……さ?」

「これからは私が命を賭けて君を守ろう。」


守る事しか知らない少女に諭すように言葉を紡ぐ。


「守…る?」

「そうだ。だから私のものになりなさい?」


だって私の腕の中は暖かいだろう?


乳房を押し付けるような仕草で、少女は私にしがみついてきた。
ぎゅうぎゅうと、まるで今までの不安をかき消してくれと言わんばかりに。

柔肌の熱に思考力を奪われたのは、私のほうだったのかもしれない。











胸に埋められた可憐なかんばせが、小悪魔の微笑に挿げ変わった事など、知る事もなく。








END
どの辺りが小悪魔なのかと。まだまだ甘いかもしれませんけど、所詮私の書くエド子はこんなもんです(笑)

pana 2006/5/20








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