| 鋼の同人作家番外 前編 お題:恥ずかしがる表情もそそるな |
| ※このお話は「ロイエド言葉責め祭り」に参加作品させて頂いておりました。 作品の展示は終了したようなのでサイトに掲載させて頂きます。 性的表現の中に「女装」「おしっこプレイ」が含まれておりますので、くれぐれも苦手な方はご注意お願いいたします。 兵どもが夢の跡 そんな空気が漂う巨大な会場内の大きな壁に身を預け、エドワードは溜息を吐く。 行列ができ、何とかスタッフの手を煩わせる事も無く今日の販売物を完売させたのは、まだ昼を過ぎて間もない頃で、何故まだ自分がここに残っていなければならないのかが理解できない。 突発のコピー誌の為に二日ほど徹夜していた身体は疲弊し、今なら目を開けたままでも眠れそうな程だ。 「兄さん、お疲れ様♪荷物は全部宅急便で送っておいたからね。」 隅っこでにこにこと紙幣を国家推奨ゴミ袋から出し、枚数を数えながら束にするという作業の片手間にアルフォンスが声をかけてきた。 「あぁ、さんきゅ…。」 疲れを隠すことすらできない兄に、アルフォンスは苦笑しつつまた新しい札束を鞄に詰める。 「あーもう、更衣室凄い混んでるんだもん参っちゃうわよ。あ、エドお疲れー!」 「お帰り、ウィンリィ。お疲れ様でした。」 「おつ…。」 エドワードの生返事をスルーしつつ、片付け具合を確認するため目を走らせるしっかり者の少女に、アルフォンスは意味深な目配せをして再び金勘定を始めた。 「あれ?もう荷物出しちゃったの?」 「うん、何かあった?」 「これよ、これ。どうせ次のコスプレOKなイベントまで使わないんだから一緒にそっち送って欲しかったのに…。」 これ、と目線まで上げたのは大きなティーンズ向けブランドの紙袋が二つ。 中が見えないようにタオルが一番上に入っているが結構なかさばり具合だ。 「あぁ、ウィンリィの売り子服?」 「そうよ。」 ぼんやりと二人の会話を聞いていたエドワードが口を開く。 決して機嫌が良いとは言えない声色で。 「そんくらいなら手持ちで帰りゃいいだろ?もう行こうぜ…。」 少女の手から紙袋をひったくるように受け取ると、今にも歩き出さんばかりの勢いで背を向ける。 「それにしても…たかが服だってのに随分なでかさだな。」 「今回はちょっとチュールを多めに使ったの。だってふんわり感出したかったんだもん☆」 「だもん☆じゃねぇ!邪魔だったじゃねぇか!!」 「えー…。エドひどーい!」 ひでぇのはどっちだ、とぶつぶつ文句を言いつつもきっちり右肩に掛けてやるのはエドワードなりの優しさだろう。 売り子服とは言っても、エドワードがここの所続きものとして出している同人誌のメイド服。所謂コスプレ衣装ってやつだ。 わざわざ作ってまで着てくれるのはとても目立つし有難いのだが、経費は全てエドワードのポケットマネーから出ている挙句、売り子にコスプレまでさせて販売促進したいとは思っていないのでウィンリィの趣味の逸品と言える。 会場の撤収の邪魔にならない様にと、何度も急かすのだが二人の足が動く事は無かった。 「どうしたんだよ!俺疲れてるんだって…早く帰ろうぜ?」 「あ、うん、ちょっと待って…これだけ…。」 「そうよエド、そんなに急ぐ事無いわよ。」 無駄にもたつく二人に、苛立ちばかりが募る。 会場内は既に半分以上の机と椅子がトラックに積み込まれており、忙しなく動くスタッフと有志の参加者を横目で見つつ、手伝っていない事に申し訳ない気持ちすら沸き始めていた。 「帰らねぇなら俺撤収手伝ってくるわ…。」 「えっ、あっ!そう、マスタングさんに挨拶しなくていいの?」 「はぁ?いいだろんなもん、アイツの方が忙しいだろうし…。」 エドワードは働きまわるスタッフを遠くに見つめながら、ふとここにはいない恋人を想った。 当時、サークルを始めたばかりだったエドワードは、中規模の即売会を中心に活動していた。 アメストリス最大の同人イベント、コミックアルケミスト、Aホールホール長であるロイ・マスタングと出合ったのは、男性向け中心で有名なヨンクリ会場でのことだ。 友人づてで仕方なくスタッフの手伝いをしていたロイは仕事をサボり、滅多にしないサークルスペースまわりをしていて、偶然にもエドワードの本を手に取り、立ち読み程度ではあったが、その才能を見出したのだ。 今でこそ創作系サークル最大手として並ばねば購入出来ぬほどの注目を浴びているが、その何割かはロイのお陰だと言っても過言ではないだろう。 ロイの手段を選ばぬ姑息なアプローチで、半年前半ば強引に恋人同士となった二人だったが、こと即売会前後となるとぱったりと会わなくなるので、今日この日、オタクの夏の祭典とも言えるコミックアルケミスト最終日に、彼と会おうなどと露ほども思っていないエドワードだった。 「冷たい事を言うね…相変わらず君は…。」 突然頭上から降って沸いた聞き覚えのある良く通る声に、エドワードはびくりと身体を震わせた。 恐る恐る振り向けば、そこには微妙に顔を引き攣らせた恋人が居て、思わず視線を逸らす。 「マスタングさん、お疲れ様でした!」 「あぁ、お疲れ様。今回は何事も問題を起こさなかったようで安心したよ。」 「いつも兄がすいません…。」 「うるっせー!なんでアンタがここに居んだよ!!仕事しろ、仕事!」 「やぁだ!エドったら大声出して…って、あら!マスタングさんお疲れ様ですぅ♪」 「ウィンリィ嬢もお疲れ様、今回は可愛いコスプレしてたんだってね?」 「お前まで…いつの間に仲良くなったんだよ…。」 呆れ顔で肩を落として見せるがウィンリィもアルフォンスも何処吹く風だ。 一通り挨拶と世間話を終えると、そそくさと手荷物を纏め、二人はエドワードに満面の笑みを浮かべた。 「じゃあ、僕とウィンリィはもう帰るから、兄さん達ごゆっくり!」 「はぁ?何言ってんだ!俺も帰って寝るぞ!!」 「馬鹿言わないでよ、アタシ達今からデートなのよ?邪魔する気?」 「でぇとぉ?ってマテコラ!何時からお前ら付き合い始めたんだよ、ありえねぇだろ普通に!!」 ぎゃんぎゃんと喚くエドワードを軽くいなし、アルフォンスはエドワードの鞄を押し付ける。 まるで宥めるように肩を叩かれ、恐らくこの事態の発端となったのであろう人物にぐるりと向き直った。 「オメェ、今度は何で買収しやがった!!」 「人聞き悪いね君、勿論何もしていないとも。人の恋路を邪魔する奴は豆に蹴られて…と言うじゃないか。」 「だぁぁぁぁれが豆と戦える程のハイパーどチビかぁぁぁぁっ!!!」 大体、この長い時間会場に留まっている時点でおかしかったのだ。 何故あの時一人ででも帰ってしまわなかったのか、今更後悔しても後の祭りなのだが…。 「じゃあ行くね兄さん、お疲れ様ー!」 「じゃね。あ、アル、最近できたショッピングモール行ってみない?」 「えー?ウィンリィの買い物長いんだよねぇ…まぁいいよ、行こう。」 仲良く語らいながらこの後のスケジュールを決めている後姿はカップルにしか見えなかった。 今日の忙しさで一度もスペースから出ていない筈のアルフォンスの手に、大切そうに抱えられている紙袋からいかにもソレっぽいポスターの先が見え隠れしている以外は…。 「また売られたのか…俺…。」 「いやいや、たまたまハボックが私のためにと新刊と販促用POPを取り置きしておいてくれたからあげただけで…。」 たまたまだよ、たまたま…。 と笑うロイをエドワードはただ力なく睨みつけるしかなかった。 「ウィンリィには何をやった…?」 「ん?一日目の入場証を頼まれたが?」 「ウィンリィ………。」 「二人だけで打ち上げもたまには良いだろう?」 今にも座り込んでしまいそうなエドワードの腰にさりげなく手を回しエスコートする。 耳元に唇を寄せ、肩に掛けられたままの紙袋を持ってやりつつ囁けば、初心な恋人は耳まで真っ赤に染め上げた。 「アンタ、スタッフの打ち上げとか良いんか?」 「正式なのは反省会も兼ねて後日だよ。」 「まだ撤収終わってねぇじゃん。」 「事前に言ってあるから大丈夫だ。」 「ふぅん…。」 あれよあれよという間に、スタッフ用屋内駐車場まで来ると、ロイの車に乗せられた。 毎回イベントと言えば愛用のビッグスクーターを利用するのが常であったはずなので、これは最初から予定された事だったのだろう。 詳しい訳では無いが、妙に座り心地の良いシートをエドワードは大層気に入っていた。 木目調の落ち着いた内装は多分高級車なのだろう。 付き合うようになってから知ったのだが、ロイはもうすぐ上場を噂されている会社の社長だった。 そんな人間が何故コミケミスタッフなどという酔狂な事をやっているのか?と聞いても「君と会えるから」なんてはぐらかされ続けている。 面倒臭いし興味も無いのでそれ以上は突っ込まないでいるのが現状だ。 適度な温度調節の冷房と、心地良い車の揺れにエドワードはこくりこくりと船を漕ぎ始めた。 殊更丁寧なハンドル捌きのため、深い眠りに誘われるのに時間はかからない。 何か良からぬ事を企むような危険な笑みを浮かべ、前方を見据えているロイに気付く事も無いまま。 後編 |
| 二つに分けます。 2007/7/11 pana |
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