鋼の同人作家2
※このお話しはパラレルでフィクションです!!!!それがちゃんと認識できる方のみスクロールお願いいたします。
























































「またアンタか…。」


俺は心底嫌そうに声を捻り出した。
携帯に当てた耳に直接響くかのような低い密かな笑い声。


『それなら着信拒否すればいいじゃないか…。』

「馬鹿言ってんな、アンタが電話しなきゃいいだけだろ?俺は文明の利器に弱いんだよ。っていうか、どこから俺の携帯番号なんか知ったんだ!」

『説明書読みたまえよ…。まぁその経緯は企業秘密だよ。』

「あんな分厚いだけの無駄な冊子、携帯買って最初に箱ごと捨てるに決まってる。あ゙ーっ、糞っ!犯人解ったらぜってーボコにしてやる!!」

『本当に君は面白いね、鋼の…。』


どうしてこうもこの男は人の神経を逆撫でるのか…。
俺は今にも真っ二つに携帯を折ってしまいたくなる衝動に耐えながら、大きく溜息をついた。

だいたい今は明日締め切りの原稿の真っ最中なのだ。
これを落としたら、ヨンクリ合わせの早割りの第一締め切りに間に合わない。
苛つきを盛大な貧乏揺すりに変えて、浸したインクが乾きかけている丸ペンの軸を握り直した。


「頼む、後生だから電話を切らせてくれ…。」


軸が指の中でみしりと小さな音を立てる。
俺のポリシーとプライドを天秤にかけた結果とは言え、懇願とは決して言えないであろう怒りに震えた声色を捻り出す。


『デートがしたいと言っているだけじゃないか…、そんなに邪険にしてくれるなよ。』

「俺は明日が本文締め切りなんだ!せめて明後日かけてきてくれよ!!」

『ああ、ヨンクリの新刊かね?それならばまだまだ締め切りには余裕があろうに。』

「早割り使うんだよ!明日第一締め切りっ!!」

『なるほど…。ではそうだね、私と必ずデートしてくれると約束してくれるならば電話を切ってあげよう。』


携帯と丸ペンを握り締め、ギリギリと歯を鳴らす兄を横目で見つつ、アルフォンスは痛む米神を指先で押さえた。
電話の内容を聞いていただけに顔は少々青褪めている。

(兄さん…決して自分からは電話が切れない思わぬ律儀な性格を思い切り逆手に取られてるよ…)

大好きな大手サークルが描いたプレミア並のポスターの為だけに兄の携帯番号を売ってしまった負い目があるだけに、居た堪れずキッチンへ避難する。
思わず耳を塞ごうと両手を挙げた瞬間、エドワードの恐ろしい雄たけびが聞こえ全身が大きく震えた。


「でぇとだぁぁぁぁぁっ??あんだ、テメェホモか?同性愛者なのか?あれか?俗に言うヤオイってやつか?いい加減にしてくれっ!!」

『何を、君さりげなく人権に関わるような事口走るのは止め給えよ。大丈夫、私が過去お付き合いしてきたのは全て女性だ。』

「俺は女じゃねぇっ!!」

『解っているとも。』


飄々と答える声に自分だけ興奮しているようで脱力感を感じてしまう。
原稿を描く時間は刻々と減っていき、焦りは怒りまで取り払ってしまったようだ。
新刊を落としたくない、っていうか早割り入稿を絶対したいエドワードの精神状態は極限を迎えつつあった。

不本意な事にエドワードはそれほど器用な人間ではなく、一つの事に没頭したいタイプ。
電話をしながらペンを入れるような芸当はできない。
繊細で、尚且つ緻密。それが売りであり、ペン入れが終了した後の処理のスピードアップに繋がるのだから。

その瞬間エドワードは頭のどこかでブチッと音が聞こえ、アルフォンスには木のペン軸の断末魔の叫びが聞こえた。


「わかった…明後日だ、明後日電話をくれ…デートでもなんでもしてやるから…。」

『了解した。その約束忘れるなよ?』

「あぁ…。」

『では明後日に…。楽しみにしているよ、鋼の。』

「はやく切れっ!!!」


そろそろと再び部屋に足を踏み入れたアルフォンスが見たのは、トレス台に突っ伏す兄の焦燥しきった姿だった。


「に、にいさ「アル…そこのペン入れ終わってる分全部取り込んでくれ…。」


あまりの雰囲気に言葉を続ける事すら憚られ、アルフォンスは乾燥が終わっている原稿を通し番号で揃え、胸に抱え込むとPCの電源を入れた。
本文入稿用に解像度を変えて、丁寧にセットし取り込んでゆく。
小さな音を立てて処理を始めたマシンから、恐る恐るエドワードに目を向けると、そこには眉間に皺を寄せて新しい予備のペン軸にペン先を差し込んでいる小さな横顔。

(兄さん…本当にごめん!あのポスターは一生大事にするからねっ!)

アルフォンスが新しい一枚を取り込み始めた頃、エドワードは力なくゆらりと立ち上がりキッチンへと向かった。

兄弟二人暮し、両者共に喫煙嗜好が無いので使い始めのペン先の油を飛ばすにはガスコンロの火を使うしかない。
丸ペンは最初の工程がとても繊細だ。エドワードはどうしても頭の中をぐるぐる回ってしまう、先ほどの携帯での遣り取りをなんとか思考から追い出し、切り替えるために大きく深呼吸をしてみた。
気分転換にと散歩に行く程時間に余裕は無いが、案外こんなんでも有効だなと思った。
いつも使っている茶碗を水で濡らし、裏返しにする。
ペンを一旦テーブルの上に置いて、歳の割にはいつまでも白くて柔らかな頬を両手でばちんと叩き、気合いを入れてやった。


「………よし。やるか。」


再びペンを手に、左腕を腕まくりする。
最後の一枚をスキャナにセットしたアルフォンスがキッチンを遠目に見ると、そこにはいつも通りの兄の姿。
いや、いつもよりも燃えているエドワードがいた。

(兄さん!焔のついた目だねっ!!)

アルフォンスはほっと胸を撫で下ろし、取り込み終わった原稿を丁寧にスキャナの脇の原稿置き場に置く。
シャーコシャーコとまるで鬼婆が包丁を研いでいるような音を聞きながら、満足気な表情で兄と扉で一続きの自室の扉を開けた。


「あー…やっぱりハボックさんの描く女の子って萌える…。」





うっとりと壁に貼られたポスターを見つめ、溜息交じりに呟いた弟が携帯番号を漏らした犯人であるなどと、エドワードは思ってもみないのだった。







END
兄さんは自分から先に電話を切れない性格でした(笑)
てか連載やろうよ自分orz

pana 2006/2/26








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