駄目 act.3





最初から見てた、心配してた。
上司は本当に少年の言うとおり、まるで八つ当たりするみたいにねちねちお小言を言ってたから。

職務なんて忘れて助け舟を出してあげればよかった。

綺麗なブロンドを一つにまとめ結い上げた忠実なる部下、ホークアイはどんな小さな場所も見逃すまいと探し回っていた。

年端も行かない少年。



自分も上司も時間を忘れて仕事に没頭してしまった、珍しく一人でやってきたエドワードがこれまた珍しく大人しく座っていたものだから、つい。
いつも仏頂面の私に臆しもせずに笑いかけてくれる子。
可愛くて仕方なかった、弟みたいで。

早く探さなきゃ。どこかで泣いてるかもしれない。
強い子だから、そんなことはないかもしれないけど、女の”もしや”は結構当たる。

大佐の気持ちだって判らなくもない。
とても大切にしているし。
あんな風な大佐を私は見たことが無かったから…。
初めて接する子供に対する精一杯の愛情表現だったのかもしれない。いきすぎ感は否めないけれど。



2階の階段の踊り場の窓から裏庭が見える。
目の端に見慣れた色彩。
真紅のコートの肩を落として歩いている金髪の少年。

反射的にUターンをしていた。

裏口にまわって外に出て、歩いていった方向に向かう。
流石に裏庭の隅なだけあって、全く手入れされていない隅の方は雑草がぼうぼうと茂っていた。
草の中に金色が混じって一緒に揺れてる。

言ったら怒るだろうけど、本当に小さい子。

「エドワード君…」

余程驚いたのか見え隠れする金色が上下にビクリと震えた。
袖口で慌てて顔を拭うように左右にも揺れる。

少し鼻詰まったような声が小さく聞こえた。
「こっちこないで、俺今自己嫌悪中…」

それでも尚大人になろうと必死の彼に、聞こえないように溜息を零す。
なんで、この子は…。

「中尉聞いて?」

「俺さっき本当は手元にあったもの全部大佐に投げつけてやりたかった、じたばたしたかったんだ…」

大声で泣いて叫びたかった。
そう告白した。
それは全て少年の歳相応な反応で、胸が痛む。

「うざいよな…ごめんね、仕事邪魔しちゃって」

そんなことない、もっと甘えていいのにと思う。
でもこの子にとってそれは大人のエゴで押し付けでしかないのだろうか。

「あとで、大佐に謝らなきゃな!あーめんどくせー!」

振り向きもせずおどけて言う、そんな声聞いていたくない。

なんと声をかけようかと考えあぐねていたとき、背後から良く知った気配。


無能…。


心の中で言ったつもりが怒りのあまり声に出てしまっていたらしい。
振り向くと溜息をつきながら額を押さえている馬鹿上司がいた。

「すまなかった、後はいいよ」
少年に気付かれないように小声で言う大佐に、きつい視線だけで『本当に大丈夫なんでしょうね?』と問いかけると、珍しく両手をあげて反省の意思を示してくれた。

では、お任せします。
と踵を返してその場を立ち去った。

まだやっておかないといけないことがあるから。
急いで…銃の手入れしておきましょう。もしもの時のために…。

胸の小さな棘は取れないものの、少し安心したのか足取りはゆっくり。
執務室に着くとハボックが煙草を咥えたままニカッと笑っていた。





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