Romanticが止まらない 番外編T





小春日和、そんな言葉が本当にしっくりくるような午後。
俺はふと読んでいた本を閉じ、資料室の窓から外を見た。
抜けるような青い空にふわふわと綿菓子のような雲が風に流され飛んでゆく。
気紛れに窓を開け放つと、外気はまだ冷たく肌を刺すようで、でも聞こえてきた鳥の声に思わず顔が綻び、凝り固まった肩を回してごきごきと音をさせ、そのままの勢いでぐんと伸びをした。


「いい天気だね、兄さん。」

「あぁ、ほらアルもこっち来てみろ、鳥の声聞こえる…。」

「本当だ…なんだかこういう感じ久しぶりな気がしちゃうね?リゼンブールから出てまだそんなに経っていないのにさ。」


そうだな、と窓の所に並んでくすくす笑い合った。


国家錬金術師の拝命を受け、初めての旅を終えた俺達は報告書というのを提出するためにイーストシティに戻っていた。
当たり前だが、社会に出たことが無い俺は、一般文書の書式すら解らず、ホークアイ中尉に教えて貰ったり、マスタング大佐ミスを指摘されて全部書き直したりと結構なな時間がかかったのだ。
漸く役目を果たし終え、次には完璧な書類にして驚かせてやろうなんて小さな野望を胸に、新しく入ったという文献を見せてもらう為資料室の鍵を借り、今に至る。

壁掛けの無機質な時計を見上げれば15時まわっていて、なるほど疲れた訳だと納得した。


「ねぇ兄さん、今頃休憩の時間じゃない?お邪魔しようよ!」

「んー…まあそうだな。行ってみっか!」


本当は邪魔になるんじゃないかな、とも思ったのだが嬉しそうに言うアルフォンスには弱い。
俺の手をぐいぐい引いて歩き始める目の前の可愛い弟に少しだけ微笑んで、足を前に動かし始めた。


顔見知りの軍人達が詰めている司令室からはかなり離れた資料室で、出た正面の窓、向かい側の棟まで移動しなければいけない。
行きは渋々迂回したが、今そんな事をしていたら休憩時間に間に合わなくなってしまう可能性も高く、俺はアルフォンスにちらりと視線を送り、窓を指差した。
それだけで察したらしい弟は、最短距離を目測で測り音だけの溜息を吐き出して俺の肩を掴む。


「兄さん…気持ちは痛いほど良く判るけどここ二階だからね…。」

「大丈夫だろ?お前も俺も…。」


悪戯に目を細めてにかっと笑えば肩を竦める大きな鎧。
どうやら俺の計画に乗ってくれるようで、カシャンと音を立てて窓に近づき、窓枠に手を掛けて最大限まで開け放った。


「僕先に降りるから、兄さんは後からだよ!」

「えー…同時に降りたほうがカッコよくねぇ?」

「そこじゃないから、問題は…。」


そんな会話をしつつもう一度正面に目を向けると、司令室の隣にある大佐執務室に人影があった。
あちらもこっちの様子に気付いたようで、笑いながら手を振っている。

大佐…まさかここから降りるなんて思ってないんだろうな…。

俺はにこやかに手を振り返し、アルの背中を右腕で叩いた。


「やっぱ同時だ、大佐が見てるぞ!アル、かっこよく決めようぜ?」

「えー!怒られるんじゃないの?」

「いいから、大丈夫見てみろ凄いご機嫌に手振ってるから。」


指差す方に顔を向けたアルに大佐は再び手を振っていて、慌てて返す仕草が我が弟ながら可愛らしかった。


「じゃあ行きますか。」

「んもう!解ったよ。」


俺達は同時に窓枠に手を掛けた、ぐんと身体を乗り出すと驚いた表情の大佐が見えてニヤリと笑う。


「飛べアル!」


声に応じるようにまずはアルフォンスが宙に舞った。
間髪入れずに飛び出せば中庭の風は冷たく心地よく俺達を包み込み、重量のあるアルが地面に着地する大きな音が耳に響く。
回転でも捻りでも加えてやろうかとも思ったが、そこまで芸人根性出して失敗するのも良い笑い種になるだろうと、足から降りるべく見下ろせば着地地点で楽しそうに両手を上に突き出している弟が見えた。

そこに降りろってのかよ!

実際の所アルの目測に間違いは無く俺はとんと軽い音を立てて無事掌の上に両足を乗せる事に成功したのだが。

へへんと鼻の下を左手で擦り、上を見上げると少しだけ顔色の悪い大佐が疲れた仕草で額を押さえていて、心配かけたかな?なんて思ったけどそんなことは知ったこっちゃない。







そのまま最短距離で建物の側まで行き錬成で階段でも作ろうと思っていたのだが、俺とアルの耳に小さなひそひそ声が聞こえてきた。
顔を見合わせ静かに聞き耳を立てると、何やら話しに夢中になっている数名の軍人。
アルの着地の音にすら気付かないなんてそれだけ深刻な内容なのだろうか?

仮にも軍属である俺様が盗み聞きなんて、と思うけどそれはそれ、好奇心旺盛なお子様を舐めちゃ駄目だぜ。
そろりと声の聞こえる方へ足を進めようとした俺を、アルフォンスは声も出さずに肘を掴んで止めた。

邪気も無く微笑めば、諦めたように鎧の頭を傾げ、俺より先に歩き始める。

なんだ結局お前も気になったんじゃないか。いっつもそうだよな!
ぶーと唇を尖らせたままアルの後に続くと、建物の隙間の植え込みで隠れた場所に3人でっかいのが固まって座ってた。

そっと聞き耳を立てると、然程小声でもないようで会話は筒抜け。
どうやら誰かの悪口みたいだ、大人なのに格好悪い。


「………からさ、俺フラれちゃって!」

「えー…、そりゃあお前…あの野郎が相手じゃなぁ…。」

「マスタング大佐って雨の日は無能なんだろ?ほら、火が出せないとか…。」

「よく仕事サボってるしな、俺この間ホークアイ中尉が銃握って探し回ってるの見たぜ?」

「あんなのがモテるなんて信じらんねぇよ!」

「無駄な仕事増やされる事もあるしなー…。」


大佐かよ…。
まぁ大佐がどんな風に見られていようが俺にもアルにも関係はない。
目で見た、肌で感じたぬくもりや優しさや感謝、それだけが俺達の全てで風評などはどうでもいいのだから。
ちらりと見ればアルは心底呆れたように肩を窄めてるし。
多分同じ疑問を持っているんだろうなと思った。



「本当だよなぁ、絶対俺達のほうが…」

「なんでそれ本人に言わないの?」

「「「は?」」」

「あ、それ僕も疑問だったんですよね。何でですか?やっぱり大人の世界には子供には理解できない柵とかあるのかなぁ、ねぇ、兄さん?」

「あー俺そういうの多分一生苦手、堂々と本人に言わないと気が済まねぇ。社会不適合者かも…。」


突然会話に割り込んできた子供に図体ばかりでっかい軍人三人組は言葉を失っていた。
”なんでこんな所にガキと鎧???”まんま顔に書いてあるぜ。
まぁ俺が軍属になってまだ日も浅いし、知らない人間の方が多いんだろうけどな。


「お前らこんなところにどうやって…。」


やっと平常心を取り戻したのか一人がそう言いはじめ、俺は後ろに近づく気配に気付きながらもそちらは向かぬまま、大声で言ってやった。


「女誑し!雨の日無能!仕事サボってんじゃねぇよ!」

「やーいタラシー!ムノー!サボリ魔ー!」

「って本当なのか?」

「なんですか?」

「鋼の…アルフォンス君……。」


俺とアルは三人組みが俺達の後ろを見て顔面蒼白になっているのを笑顔で確認してからゆっくりと振り返った。
両手を組んで眉間に皺を寄せ、米神をピクピクさせている黒髪の将校サンは実はとても優しい人だってこんなにも短い付き合いなのに知ってるから、俺達は怖がったりしない。

大佐は三人組をちらりと見て、俺達の背に手をまわした。

「上で中尉がお茶と菓子を用意している、行こうか。」

「やったぜ!」

「良かったね兄さん♪」


ほのぼのムードを纏って俺達は中庭を突っ切る。
歩き始めてから背後でドカンと爆発音みたいなのがした気もするけど、まぁいっか。


司令室の真下まで到着すると俺は両手をパンと合わせ、地面につけた。
地面からせり上がって来る錬成された階段を悠々と登り、大好きな皆のいる場所へ。

窓を開けて待っていてくれたホークアイ中尉にお礼を言いつつ、午後のティータイムと洒落込んだ。















「なぁ、大佐ってタラシなのか?」

「さっきの兄さんの跳躍かっこよかったですよね!」

「うむ、まぁあれだ!さっきのは、何と言うかさるまわs「何か言ったかこるぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」










END
Romantic番外編です。
相変わらず姉弟(まぁ兄弟でも通る内容ですけどね)は大佐大好きですな。
なんちゅーか一度目の旅から帰ってきた時くらいの話しだと思って適当に流してください(いい加減だなオイ)。
アンケートでRomanticが上位にあって密かに驚いていたりする私です。
優しいマスタングもお好きですか(笑)
変態ばっかり書いてると段々脳内が(自主規制)
本編も動かしますね、空を先に終わらせないとorz

pana 2006/2/22








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