エド子連載系
Romanticが止まらない act.8





昼食を終え東方司令部に着くと私たちは真っ直ぐ執務室へ戻った。
鋼のは先程の続きをやる為に、私は執務の為に。

今夜のディナーも彼等を誘えるといい。
そんな事のためにこの私が真面目に仕事に勤しむなんて、笑ってしまう。

書類が一山積まれているデスクに腰掛けると、目の前にはソファに寝そべり既に文献に没頭してしまっているエドワードがいる。
この切り替えの早さが天才たる所以だろうか。

先程感じたあの不可解な感情を思い起こし、散漫になる頭を軽く振った。
数枚書類を上げる度に目が彼にいく。


紙をめくる音、小さな頭を支える鋼の右腕。
さらりと頬にかかる金糸が表情を隠してしまっているのを残念に思う自分。



「不可解な…。」
つい声に出してしまった。
呟きよりも囁きに近いそれに、不可解の元凶が気だるげに言葉を返す。

「…何が?」

まさか返事が来るとは思わなくて書類から視線を投げると、眠たげにページを指で弄ぶ小さな子供。
とろりと蕩けた眼差しや、ほんの少しだけ開いた唇は下半身に直結する衝撃を与えた。

どこかで…そうだ、あの日。
アルフォンスに負ぶわれ眠気を堪えていたエドワードの瞼にキスをした、あの時の表情だ。
じわりと体内を蝕む独特の熱。




「鋼の、無理をせず眠りなさい?毛布を持ってきてあげよう。」

鈍い動き。ゆっくりと本を閉じて仰向けになる。
眠るという合図なのだと思い、私は専用仮眠室になっている続きの部屋から毛布を携えて戻った。


やはり熟睡できないのか、もそもそと身じろぎする姿はまるで収まりの良い場所を探す猫のよう。
不覚にもまた、可愛いと思ってしまった。
何なんだ、こんな子供に。
ましてや相手は少年だ、女性にしか興味の沸かないはずのこの私がこんな感情を持つなんてありえない。


ふわりと毛布をかけてやると暖かいのかにこりと微笑む。

「んー…ある…。」

甘ったれたような少し掠れた声。
その砂糖菓子のような唇が紡ぐ名前が何故自分ではないのだろう。
不可解な思いは明確な言葉となって胸の中に沸き上がり、小さな波紋を作った。


「エドワード、こちらを向いてごらん?」
「んー?」


既に瞑る寸前、僅かに見える琥珀色の瞳が欠伸のせいで潤んでいる。
柔らかな髪を優しく梳いてやると、温もりを求めるように掌に頬を寄せてきた。
ともすれば誘っているかのような仕草に頬が紅潮するのが解り、頬に触れていた手を滑らせて瞳を閉じさせた。


両瞼に触れるだけのキス。
2度目だというのに1度目の時とは全く違う感触。
右へ、左へ。離すのが惜しいと思った。このまま唇へ伝って貪ってしまいたいと。


私は必死の思いで顔を上げ、震えぬように慎重に、優しく耳元で囁いた。


「おやすみ、エドワード…。」
「お…やすみなさ……。」


すぅ、とすぐに聞こえ始めた寝息に苦笑する。
本当に子供なのだ、と。


それでも自分は気付いてしまった。
彼に対する特別な感情に。


愛しい、護りたい。
君に触れたい。



子供でも大人でも、男でも女でも、そんなのどうでもいいのだ。
君が君として私の前で存在する奇跡を思い、私はエドワード・エルリックに感謝した。





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ロイ自覚。

pana 2005/10/23








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