エド子連載系
Romanticが止まらない act.7





もうすぐ昼休みが取れるな、などとまだ未決済の書類の厚さを見ながら思う。
ここ数週間、常に無表情に徹し東方司令部のクールビューティーと謳われている副官が笑顔を見せてくれる程に奇跡的な仕事量を最短時間でこなしている。

それもこれもエルリック兄弟との夕食を楽しむ為だ。
たかがそれだけの事を理由にして、と少し前までの私を知っている人間は首を傾げるだろう。
理由など自分でも解らない。

でも解らなくても気にならなかった。
ありえない事だが、そんな曖昧な感情を私は楽しんですらいたのだ。


彼等には不思議な魅力があって、腹心の部下達に彼等の食事の相手を頼んだ時に嫌がるどころか喜んで受け入れられた事が全てを物語っていると思う。
子供が苦手なブレダですら笑顔で誘いに行くのだから驚いたものだ。




カタンと小さな音を立てて万年筆を置く。
その音に反応して顔を上げたのは弟のアルフォンスだった。

今、彼等は私の執務室にいる。
昨日図書館で見つけた文献に関連した情報が載っている書物をここの書棚で見かけたからだそうだ。

それならば…と私は昼食に誘い、滞りなく仕事を収める為にペンを走らせていた。
そして今。


「昼間までのノルマは終わったよ…。」

やれやれ、と肩を回すとアルフォンスは嬉しそうに立ち上がった。

「お疲れ様です、大佐。僕肩揉みます♪」
「えっ?いや…。」
「遠慮しないでください、僕結構凝り性の兄の肩揉んでますし、錬金術の師匠からも凄く気持ちいいって褒められてたんですよ!」

手をわきわきさせながら近付いてくる彼に少しだけ恐怖を感じてしまったのは許して欲しい…。


「ああ、本当に上手いね。」
「そうでしょ?あ、強かったり弱かったりしたら言ってくださいね。」
「大丈夫だ…。」


初めて施されたそれは思いの他気持ちよくて、思わず目を瞑ってしまった。
うーん、父親ってのはこんな気分なのだろうか…。

恐ろしい考えにふと目を開けると、未だ本に没頭しているエドワード。
兄を見つめているのに気が付いたのかアルフォンスがまるで大切な秘密を教えるような密やかな声で楽しそうに口を開く。

「本当は兄さんの方が上手なんですよ♪」
「ほぅ。」
「今度一回背中とか揉んでもらったらどうです?師匠曰く、『プロも真っ青の天にも昇る心地よさ』らしいので。」
「それは一度お願いしたいものだね。」

小声のままでくすくすと笑いあっていたら、集中力が途切れたのか鋼のが重たい頭を上げた。

「お、いいなぁアル最近揉んでくれないんだもんなぁ。」
「あとで宿に帰ったら久しぶりに揉んであげるよ。」
「お、やったー!」

なんて兄弟の会話も好ましい。

「大佐、アルのマッサージは世界一だろ?」

鋼のまでまるで自分の事のように自慢するものだから、さっきのアルフォンスとの会話を思い出して噴出してしまった。


「君たちは本当に…いい兄弟だね…。」
なんて嫌味っぽく言ったつもりだったのに、
「ったりめーだ!」
なんて胸を張る始末。


彼等にはこのテの嫌味は通じないのだと、なんだか気恥ずかしい程の温かさを感じた。


「ありがとうアルフォンス君。とても気持ち良かったよ。」
「そうですか?お粗末様でした。」
「さて、昼食に行こう。」
「はい。」
「おう。」















肩も軽いし天気も良い。
何よりこの兄弟との会話は食事を美味しくさせてくれる。
この辺では一番と評判のパスタの店が噂通りだったのも満足だ。

不思議と司令部へ戻る足取りも軽くなった。


「あ、兄さんさっきのやつ。」
「ん?」
「僕が今から図書館行って調べてくるから、兄さんは大佐のところで続けてもらえる?」
「あぁ、解った。」
「大佐、もう少し兄がお邪魔しますけど、宜しくお願いしますね!」
「任せておきなさい。適度に休息も取らせよう。」
「お願いします。」
「お前等!子供扱いすんなー!!」


図書館へ続く曲がり角でアルフォンスと別れ、しつこくぶつぶつ言っている鋼のをからかいながら歩く。
本当に飽きない兄弟だ。










午後の日差しが街路樹から透けて道路に当たっている。
ふと視線を上げたら、その光景に釘付けになった。

蜂蜜のように濃厚で柔らかい金色を放つ髪が光に溶けて、愛らしい額に優しい影を落としている。
人を惹きつけて止まない強い瞳が今はとても甘やかな光彩を放っていて…。

あの歓迎会の夜にも似たような感覚に囚われたが、日の光で、月の光で全く違う表情を醸し出す、艶。





思わずごくりと喉を鳴らしてしまった自分に気付き、驚いた。
今私は何を思った?





立ち止まってしまった私を訝しんだのか、鋼のは少しだけ開いた距離を縮めるべくとことことこちらに近付いてきて私の顔を覗き込んだ。

「大佐?」

返事なんてできなかった。
すぐ側にある唇があまりにも柔らかそうで、傷一つない瑞々しいな果実のようだったから。

私はぶるりと頭を振って意識を戻そうとした。
結局目は彼の唇や、まるい頬のラインにいってしまうのだが、言葉が出せるほどには回復できたのでまた歩き出す。

「なーんだよー!急に立ち止まったり歩いたり!」
「あぁすまなかった。少し考え事をしてしまったようだ。」

平静を装い紡ぐ言葉が彼に悟られないように…なんて、なんでそんな事を考えてしまうのかも解らないまま少し後ろに感じる鋼のの歩く気配に目を細めた。





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惹かれてます。
アルの思惑通り?

pana 2005/10/18








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