エド子連載系
Romanticが止まらない act.2





「あれ?中尉、大佐はどうしたんすか?」

無表情のまま仕事をこなし続ける金髪美人上司に向かってハボックは咥え煙草のまま話しかけた。
ふと視線だけを走らせて肩をすぼめ小さく溜息を零す。美人だけに迫力満点だ。

「大佐は逃亡中です。きっとまたナンパした女性とひと時のランデブーでもしてるんでしょう…」
(今時ランデブーってあーた…)

そう言い捨てると胸元のホルスターに手を滑り込ませ目を据わらせた。
物凄い怒りのオーラに押されて、事務椅子ごと身を引かせる。
しかし銃を出すまではせず、ホークアイ中尉は時計を見上げた。

「今日は新しく着任した国家錬金術師殿が挨拶に来るんじゃなかったッスか?」
「そうなのよ。既にこちらに向かってるはずよ」

はぁ〜と重く溜息をつき、あの逃亡癖のある大佐を思った。

「それよりどんな方なんスかね、大佐の下につく国家錬金術師殿ってのは。」

少尉も会ったことある人よ、と言う途中で廊下からバタバタと物凄い足音が聞こえ始めた。

子供らしいけたたましい程のノック音を響かせ、返事も待たずに扉が開く。

「どーもー!」

なんと軍隊にあるまじき軽い挨拶だろうか。
その場にいた全員が一瞬眩暈を感じたのは言うまでも無い。

扉に一斉に視線が注がれると、そこにはちんまりとした金髪の少年が立っていた。
整った顔立ちを彩る金色の髪、金色の瞳、珍しい色彩。
真っ黒の服の上に無造作にかけられた真紅のコート。
目を引く。


「エドワード・エルリック。鋼の錬金術師、皆さんヨロシク!」

零れる様な愛らしい笑顔に、凄腕の兵士達が全員降参した瞬間であった。
上官というには余りにも幼く、本人も上官という意識がないのか慌てて姿勢を正したその場の全員におどけて言う。
「堅苦しいの俺きらい、普通に接して?」
上目遣いで首を傾げながら全員を見回す小さな子供に目尻が下がらない人間はいなかった。


((((可愛すぎます!!!))))


雷を落とされるのを覚悟で逃走し、美人司書との逢瀬に出かけていたホークアイ中尉曰く馬鹿上司が戻る頃にはすっかり打ち解け、部下達に囲まれ楽しそうに談笑していた。

しまった、本当に真面目にすっかり忘れてた…。
声には出さず開けっ放しの扉のところで頭を抱えているロイにいち早く気付いたのは今夜の主役になるであろう少年であった。

「ばかじょうし、おかえり。」
誰に吹き込まれたのかは一目瞭然、ホークアイの怒りも考慮の上でニヤニヤとロイを見上げる挑戦的な金色の瞳。

「君は上官に対する態度がなっていないね。まぁすっかり紹介も終わっているようで手間が省けたよ。」
やれやれと肩を窄めながら溜息をついてみせる。
わざとらしいその動きにゆらりと立ち上がる殺意のオーラに背中が冷やりとするのを感じた。

「大佐、今日エドワード君が挨拶に来られるのすっかりお忘れだったようですね?今日はどこの女性ですか?」
張り付いた笑顔、立ち昇る殺意、その場にいた全員が身を引かせる程。

「い、いや中尉それは誤解だ、う…ん、そう!鋼の錬金術師君の歓迎会の会場の下見をだね、あはははは…」

嫌〜な空気を一掃したのは最初に火種を撒いたエドワードだった。

「そんなことより大佐、お願いがあるんだけど…」
「な、なにかね?何でも言ってくれたまえ!」

チャンスとばかりに話を逸らす。
チッと舌打ちが聞こえたのは空耳だと思う事にしよう。

「弟のアルフォンスが外で待ってるんだ」

入ってきちゃだめ?とこれまた愛らしく小首を傾げるエドワードに部下達の一斉援護が入った。

「お取り計らいを願いします。当然ですよね?た・い・さ!」

ロイは嫌な脂汗をかいて顔を引き攣らせながらとぼとぼとデスクの電話に手を伸ばした。
入館を許可されたアルフォンスが司令室に来たのは約5分後のことである。


「初めまして、弟のアルフォンス・エルリックです」
可愛らしい声とは裏腹な逞しい鎧姿の少年が丁寧に頭を下げる。
無論初対面の人間は皆総じて衝撃を隠せずフリーズしている。
そんな事はどうでもいいと巨体な鎧は続けざまに兄に向かって捲くし立てた。
「兄さんちゃんとご挨拶できた?駄目だよこれから皆さんにお世話になるんだから!」
余りのギャップに言葉も出ないロイとホークアイ以外の人間を他所に、小さな金色の少年がさくらんぼ色の唇をとがらせ反論を口にしていた。
「したってば!信用ねぇなぁ俺、ちぇー」
そのほのぼのした遣り取りに一気に気が抜けたようで、皆がくすくすと笑い始める。


「今日は君達の歓迎会をやるから、参加したまえアルフォンス君。」

弟共々大変な歓迎を受け、一通りの挨拶を終えるとホークアイの一喝で渋々仕事に戻っていった。

「鋼の…、時間までアルフォンス君と執務室にいるといい。ここにいると皆気が散って仕事ができないようなのでね。」

さぼってたのアンタだろ、という心の声をぐっと飲み込み、部下達は机の下で拳を握っていたのは言うまでも無い。
いつまででも見ていたい程の可愛い兄弟を名残惜しげに見送った。





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